約 2,780,602 件
https://w.atwiki.jp/crossnovel/pages/141.html
数分後、少女とガンナーAは病院に到着した。 駆け足で病院に入ろうとする少女であったが、ガンナーAも一緒に入ろうとしていたため、 ガンナーAの前に立ち塞がる。 「えぇっと・・・君はホラ・・・あの・・・駐車場で待ってて・・・ね?」 少女の言葉を聞き、少々悲しげな顔をしながら駐車場へ移動するガンナーA。 一方、彼女はそれを見届けると、再び駆け足で病院の受付へと移動した。 「すみません!先ほど入ってきた、腕を怪我した『髪の毛トゲトゲ男』と・・・あと!赤い『バイク男』を見ませんでした?!」 「おい、『バイク男』って呼び名は感心しないな。」 「え?」 振り向く少女。 そこには、先ほどバイクへの変形を披露した男が変身を解除した状態で立っていた。 「あ・・・あ・・・あ・・・バイクおとこぉっ!!」 「黙れ。病院内は静かにしろ。」 そう言って、男は病院に貼られた『院内ではお静かに』と書かれたチラシを指差す。 「あ、ごめんなさい・・・じゃなくて、あんた何者なのよ!」 再び大声をあげる少女。 「・・・名乗ったら静かにしてくれるか?」 「え・・・あ・・・はい。」 「照井 竜、風都警察:超常犯罪捜査課の課長だ。」 そう言って、照井 竜は警察手帳を少女へと見せた。 「風都・・・警察・・・?」 「・・・そうだ。おい、お前。」 「な・・・何よ?」 「名前と住所・・・あと、お前が持っているガイアメモリの名前を言え。」 「ガイアメモリ?」 「そうだ。さっきの戦いから察するに『サンダー』とか『ビーム』とか・・・あとは『エナジー』ってとこか?」 「・・・もしかして、私の『超電磁砲(レールガン)』のことを言ってるの?」 「そうだ。あんな攻撃性のある能力を持った少女がどこにいる。そんな所業をやってのけるのはドーパントぐらいだろう。」 「ど・・・どーぱ?」 「照井さん、ビリビリはドーパントじゃありません。」 その時、照井の後ろから聞こえてくる声。 その声の主は、腕に包帯を巻いた状態で診察室から出てきた上条であった。 「どういうことだ?」 「俺たち学園都市に住む人間は、能力開発によって多種多様な特殊能力を開花させているんです。 俺の<幻想殺し>しかり、ビリビリの<超電磁砲>しかり・・・。」 「まるで『ハリーポッター』みたいな話だな。」 「確かに、学園都市以外の人から見ればそうかもしれませんがね。 それにしても・・・どうして風都にいるはずの照井さんが学園都市に?」 「ああ、実は・・・。」 「ちょっと、ストップ!」 話そうとする照井の前に少女が立ち塞がる。 「何だ、ビリビリ?」 照井が言う。 「アンタまで『ビリビリ』って言うな!私にはね、御坂 美琴って名前があるんだから!!」 「・・・で、要件は何だ?」 「えぇっと・・・照井刑事だっけ?何でそんなにコイツと親しげなのよ?!」 「ビリビリ、病院内では静かに・・・。」 「うっさい、バカ!!」 「・・・。」 「早く答えなさい!アンタとそこのバカとの関係は?!」 「さっきも言ったはずだ、俺に質問するな。」 「な・・・な・・・な・・・?!」 クールにあしらう照井によって、いつもは冷静な御坂が爆発寸前と化す。 「・・・ったく。ビリビリ、俺が説明してやるから聞け。」 この状況を見て、上条が口を開く。 「照井さんはな、中学時代に俺がよく行ってたカレー屋さんの店員だったんだよ。」 「・・・カレー屋?」 「ああ、何年か前まで学園都市にあった『恐竜や』って店だ。 当時、俺はバイクの修理に必要なパーツがあって、一時期資金集めのためにそこでバイトをしていたんだ。」 照井も口を開く。 「バイク・・・。」 ポツリという御坂。 その言葉を照井は逃さなかった。 「ああ・・・お前の壊したディアブロッサのな。」 「壊した?」 「実はな・・・。」 それは、少し前のこと。 学園都市に着いたばかりの照井は長い信号待ちに耐えきれず、暇つぶしにと周りをキョロキョロ見ていた時だった。 ふと目線に入る少女の姿。 それは御坂 美琴であり、彼女はなかなかお札を認識しないジュースの自動販売機と悪戦苦闘していた。 「このポンコツ!何度やったら認識するのよ!!」 いつもは冷静な彼女が怒りを露わにし、そして自販機を蹴りながら言う。 この光景に対し、警察官である照井はバイクを止め、彼女に注意をしようとしたのだったが・・・。 ついにお札の排出回数が10回を記録した時、彼女の怒りは頂点に達し、 そして自身の持つ<超電磁砲>を暴走させてしまうのであった。 彼女の周囲に発生する雷撃。 突然の事態に対し、照井は反射的にアクセル・トライアルへと変身、 超高速移動による防御で雷撃からのダメージを防ぐことは出来たものの、 路端に止めてあったバイクに関してはどうすることも出来ず、雷撃の直撃によって半壊してしまったのであった。 「・・・。」 唖然とする上条。 一方の御坂は冷や汗をかきながら明後日の方向を見ていた。 「照井さん・・・。」 「なんだ?」 「ドーパントだろうが無かろうが、とりあえずビリビリを逮捕しちゃって結構です。」 「な・・・?!」 「心配するな。逮捕はせん・・・が、慰謝料が十二分に貰う。」 「ななな・・・?!」 その時だった。 「とおま~!」 御坂の後ろから聞こえてくる、上条にとって聞き慣れた声。 上条が声の方向を見ると、そこにはバイクのフルフェイスを被り、大きなオタマを手に持った少女がいた。 「・・・禁書?!」 上条が大声をあげる。 一方の禁書は上条の腕に巻かれた包帯をジッと見ていた。 「あ、怪我してる・・・ってことは、やっぱり『青の通り魔』が出たんだね?!」 「これは・・・まあ何だ、ちょっと腕の筋肉を痛めただけだ。心配はしなくて・・・。」 「私を家に置いてったから罰が当たったんだよ!とうまは当分反省するんだよ!!」 「・・・お前な、それが『ボディガードになる』って言った奴のセリフか? ・・・ていうか、お前どうやってここまで来たんだよ?」 「家にいたら急に胸騒ぎがしてね、それでとりあえず病院に行ってみようと思ったんだよ。」 「『とりあえず』って・・・随分神がかり的な勘だな。」 「へへーん、神を信じる者は救われるんだよ!だから、とうまも神様を大事にするんだよ!!」 「はいはい・・・。」 「・・・でね、どうやって行こうか考えてたらね、マンションの駐車場にバイクに乗った人がいたから、 その人に頼んで連れて来てもらったんだよ!」 「バイクに乗った・・・?」 「君が禁書の言っていた『とうま』か。」 彼らの輪に加わるもう1人の影。 「遅かったな、フィリップ。」 照井が言う。 「ああ、頼まれたとおり『青の通り魔』に関しての検索をしてみたが、 学園都市内の情報はロックのかかった物がほとんどでね。 とりあえず、ロックのかかってない情報から出来る限りのデータを集めてみたんだが・・・ 熱中し過ぎて遅くなってしまった。」 そう言って、フィリップは照井に1冊のファイルを渡す。 「・・・もしかして、あなたが学園都市に来た理由って・・・。」 御坂が照井に言う。 「ああ、『青の通り魔』を逮捕するためだ。 今回の事件に関しては警備員(アンチスキル)でもお手上げらしくてな。」 「そこで、僕たちに依頼が来た・・・ってワケさ。」 フィリップが言う。 「ところで・・・禁書・・・と言ったか? 君は上条に対して『やっぱり『青の通り魔』が出た』と言っていたが、どういうことなんだ?」 照井が禁書に聞く。 「・・・あのね、夢を見たんだよ。」 「夢?」 禁書は照井に説明した。 夢の中で、上条が『青の通り魔』に襲われたことを。 また、禁書の目の前で彼を葬り去ろうとしたことも。 そして・・・。 「『青の通り魔』は最後にこう言ったんだよ。『絶望がお前のゴールだ』って・・・。」 「何・・・?」 顔を曇らせる照井。 『絶望がお前のゴールだ』・・・この言葉は、彼がドーパントと敵対した際に言う言葉のひとつである。 いくら夢とは言え、何故『青の通り魔』がその言葉を・・・? 偶然なのか、それとも・・・? 「・・・あ!!」 突然、大声をあげる禁書。 「どうした?」 「もうすぐ、『フーティックアイドル』の時間なんだよ! 今日はジミー中田のリベンジ3週目なんだから見逃せないんだよ!!」 「・・・フィリップ、到着してすぐで悪いが、上条と禁書を家まで送ってやってくれないか? 駐車場にガンナーAが待機してるはずだから、それを使えば2人を同時に送れるだろう?」 「了解した。禁書・・・あと、君も来てくれ。」 そう言って、フィリップは禁書と上条を外へ連れ出そうとする。 「・・・あ、照井さん、先に失礼します。」 そう言って、頭を下げる上条。 一方の禁書は何も言わずにさっさとフィリップの所へ行ってしまった。 「・・・じゃあ、私もこれで。」 「待て。」 自然に帰ろうとする御坂を照井が止める。 「ハハハ・・・やっぱりね。」 「言ったはずだ、『慰謝料を払ってもらう』と。」 「何よ!確かにバイクを壊したのは悪かったけど・・・こんなか弱き女子中学生からお金を取ろうってワケ? それとも・・・まさか、『体で払え』とか言うつもり?!」 「そのつもりだ。お前には『体で払ってもらう』。」 「・・・え?」 その日の夜・・・。 「お待たせ。」 学園都市の一画でパトロールを行なう照井のもとへ、ハードガンナーに乗ったフィリップが再び現れた。 「・・・その様子だと、良い情報を得られたようだな。」 「ああ。それにしても、よく彼女が風紀委員(ジャッジメント)と関係あると気付いたね。」 「簡単なことだ。アイツと戦った時、風紀委員のひとりである白井 黒子のことを『黒子』と親しげに呼んだこと。 そして、アイツが白井 黒子と関係の深い『御坂 美琴』だと名乗ったこと。そこから結びつくのは・・・ってとこだ。」 「なるほど、翔太郎ばりの推理だね。」 「アイツと一緒にするな。・・・それにしても、左の容体はどうなんだ?」 「僕が出掛ける直前まで熱でうなされてたが・・・まあ、問題無い。」 一方、風都の鳴海探偵事務所では・・・。 「まるで遠足前の子供ね。竜くんとの調査前日の夜になって、急に風邪引くなんて・・・。」 鳴海 亜希子がベッドで赤い顔で横になる左 翔太郎の氷のうを取り換えながらつぶやく。 「馬鹿野郎、俺だって好きで夏風邪を・・・フェックショ~イ!!」 「わぁ?!汚い!!」 そう言って、亜希子は<健康第一>と書かれたスリッパで翔太郎を勢いよく叩くのであった。 「ところで・・・地球(ほし)の本棚での再検索の結果は?」 「ああ、これだ。」 照井の問いに対し、フィリップが1冊の本を取り出す。 学園都市へ来る前、地球(ほし)の本棚にて『青の通り魔』に関する検索を行なったフィリップであったが、 学園都市側からのセキュリティで検索は不十分に終わってしまった。 そこで、照井は偶然出会った御坂に目をつけ、彼女を通じて風紀委員へ協力を依頼、 ハッキングによるセキュリティ解除を行なったのだった。 照井の言った、御坂への『体で払ってもらう』・・・それは御坂の交友関係をフルに利用した協力のことであった。 そして、セキュリティの有無に関係なく検索可能になったフィリップは再度『青の通り魔』に関する検索を再開。 『青の通り魔』、『学園都市』、『風』、『高速移動能力』、『連打攻撃』・・・。 思いつく限りのワードを入れていくフィリップ。 その結果、ついに1冊の本へとたどり着いたのだった。 だが、その本のタイトルは・・・。 「犯人は・・・トライアルのメモリの持ち主だと?」 本を読んで、声をあげる照井。 昼間の御坂との戦いで使用したように、トライアルのメモリの持ち主である彼が驚くのも無理は無かった。 「フィリップ、これは悪ふざけのつもりか?」 照井がフィリップに迫る。 これに対し、フィリップは冷静に答える。 「落ち着くんだ、照井 竜。確かに『青の通り魔』の正体はトライアルのメモリの持ち主だ。 ・・・だが、誰も犯人は君だと言ってはいない。」 「・・・どういうことだ?」 困惑する照井に対し、フィリップがもう1冊の本を手渡す。 「これは・・・?」 「それも『トライアルのメモリ』に関する本だ。 ・・・ただし、それは『君の持つトライアルのメモリ』のほうだが。」 「俺の持つ・・・?どういうことだ?本来、地球(ほし)の本棚には1つの存在に対して1冊の本しか存在しないはずでは・・・。」 「『本来』はね。・・・しかし、何らかの作用が記憶に対して働くことで本が増えることもある。 以前、1つの存在が善と悪に分離したことで本が2冊になったこともあるけど・・・今回の場合は少し違う。 言うなれば、『新しい存在が誕生し、かつての存在に取って替わりつつある』という表現が正しいかもしれない。」 「新しい・・・トライアルだと?」 「トライアルだけじゃない。僕が調べた限りじゃ、僕たちのジョーカーやヒート、 他にもナスカやウェザーといったデータにも『新しい存在』が生まれつつある。」 「どうしてこんなことに・・・?」 「・・・そこで、僕はある仮説を立てて検索を行なった。」 無数の記憶や存在に関するデータが保管されている<地球(ほし)の本棚>。 その中央に立つフィリップは検索するワードを唱えた。 「キーワードは・・・『学園都市』、『能力開発』、『ガイアメモリ』、『新たな記憶』。」 4つの言葉によって、またたく間に数を減らしていく本。 その結果、1冊の本が彼の前に現われた。 その本の名は・・・。 「T2ガイアメモリ?」 「ああ。一部のデータは閲覧できなかったが、 この学園都市に存在する特殊能力・・・<幻想御手(レベルアッパー)>を使って、 何者かがこれまでのガイアメモリの能力を強化した新型ガイアメモリを開発していることは確かだ。」 「そして『青の通り魔』は、そのT2ガイアメモリのひとつであるトライアルのメモリで罪もない人を襲っているのか・・・。」 「お~い、フィリップぅ~!てるい~!!」 突然、彼らの耳元に届く少女の声。 彼らが振り向くと、その先には上条の家に帰ったはずの禁書の姿があった。 「禁書!どうしたんだ、こんな時間に?」 「私に質問するな!なんだよ。」 「・・・はい?」 「冗談ジョーダン!・・・はい、コレ!とうまからの差し入れ!!」 そう言って、おにぎりの入った包みを照井に渡す禁書。 「そうか、これを届けに・・・。」 「ところで・・・禁書、彼は一緒じゃないのか?」 フィリップが聞く。 「とうまなら家に置いてきたんだよ。 『俺が行く』なんて言い出したから、オタマでスネを引っ叩いてなんとか阻止してきたんだよ。」 そう言って大きなオタマを取り出し、嬉しそうな顔をする禁書。 「なんともアクティブなお嬢さんだ・・・。」 そう言って、照井は受け取った包みをフィリップに手渡す。 「とりあえず、禁書は家に帰るんだ。いつ『青の通り魔』が現れるか分からんし・・・それに、もう22時だ。 良い子は家で寝てなくちゃダメだ。」 「むぅ~、子供扱いするぅ!それにわたしはとうまのボディガードなんだよ。 だから、てるい達と『青の通り魔』をふん捕まえて、ボッコボコにしてやるんだよ!!」 そう言って、オタマを振り回す禁書。 それに対し、照井は強めに彼女の肩を掴むのであった。 「?・・・てるい、ちょっと痛いよ・・・。」 嫌がる禁書に対し、照井が厳しい表情で言う。 「禁書、お前が上条を守りたい気持ちは分かる。だが、お前には危険過ぎる任務だ。 だから・・・ここは俺達に任せてくれ。」 「でも・・・。」 「お願いだ、禁書。俺達を信じてくれ。」 「・・・分かった。でも、絶対にとうまを守るんだよ!そして、『青の通り魔』をボッコボコにしてやるんだよ!!」 「約束しよう。」 「・・・でも、もし約束を守れなかったら?」 フィリップが横から、場の空気を読めてないセリフを言う。 「フィリップ・・・お前な・・・。」 「大丈夫だよ、フィリップ。私はてるいのことを信じるよ。」 禁書が言う。 「禁書・・・。」 「でも・・・約束を破ったら承知しないんだよ! 破ったら、私に満腹になるまでご飯をご馳走するぐらいのことはしてもらうんだよ!!」 「・・・。」 その時だった。 会話をする3人のもとへ、ひとりの女性の叫び声が聞こえてくる。 「・・・今の声は!」 「確か・・・みさかの友達の・・・くろこ!!」 「フィリップ、俺が行く!お前はこの子を頼む!!」 「待て、照井 竜。」 駆け出そうとする照井に対し、フィリップが小さなアタッシェケースを渡す。 ケースを開ける照井。 その中には、フィリップが変身に用いる3本のガイアメモリと、メモリガジェットのひとつであるデンデンセンサーが入っていた。 「敵は超高速移動能力の持ち主だ。おそらく、それが必要になる。」 「分かった。」 そう言って、照井はアタッシェケースを持ち、声の方向へ急ぐのであった。 「・・・くっ・・・なんて速さなの・・・。」 一方、風紀委員のひとりである白井 黒子は、傷つきながらも何者かと戦っていた。 学園都市の闇夜を利用し、闇から闇への高速移動を繰り返し、そして移動の度に攻撃を行なうという手法を採る相手。 これに対し、自身の持つ<空間移動(テレポート)>での戦線離脱を図ろうとする白井であったが、 能力を発動させる際に出来る隙を狙われ、逃げることが出来ずにいた。 どうすることも出来ず、防戦一方の彼女に対して攻撃を繰り返す敵。 そして、何度目かの攻撃によって白井は片膝をついてしまうのであった。 何者かが言う。 「ふっふっふ・・・良いものですね。 屈強な男が一瞬にして倒される様子も滑稽ですが、今日のようにか弱い女の子が徐々に痛めつけられていくというのも・・・。」 「・・・まさか・・・あんたが・・・『青の通り魔』・・・?」 「名乗るほどの者ではありませんよ。もうすぐ私に倒される者に対してね・・・。」 そう言って、『青の通り魔』は一直線に白井へとどめを刺しに行こうとする。 その時・・・。 CYCLONE!MAXIMUM DRIVE!! 『青の通り魔』の耳に入るガイアウィスパー。 その直後、サイクロン・メモリの力をまとったビートルフォンが超高速で『青の通り魔』に迫る。 「む?!このガジェットは!!」 突然の事態にビートルフォンの体当たりを正面でガードする『青の通り魔』。 「おのれ・・・ん?」 攻撃体勢に入ろうとしたその時,『青の通り魔』があることに気付く。 先ほどまで自身が攻撃を加えていた白井の姿が忽然と姿を消していたのだった。 「まさか・・・このガジェットは囮!」 「そうだ、『青の通り魔』!」 突然、学園都市の闇夜に響き渡る声。 『青の通り魔』が声の方向を見ると、そこには月夜に照らされた仮面ライダーアクセル トライアルと、 アクセルにお姫様だっこをされた状態の白井の姿があった。 「ありがとうございますわ・・・仮面ライダー。」 「礼は後にしろ。今はこの場から離れるんだ。」 「・・・分かりました。」 そう言って<空間移動>を行ない、白井は戦線離脱する。 一方のアクセルはゆっくりと『青の通り魔』の前に立ち塞がった。 「ジャッジメントだ・・・『青の通り魔』!!」 声をあげるアクセル。 それに対し、『青の通り魔』は言い放った。 「ふふっ・・・まさか、また君に会うとは・・・これも運命なのですかねぇ・・・。」 「・・・『また』・・・だと?」 『青の通り魔』の言葉にアクセルが戸惑う。 「ええ・・・まさか、忘れてしまったのですか?君にとっての『復讐の相手』だった私のことを・・・。」 「・・・!そんな馬鹿な!!お前は死んだはず?!」 「なら、ここにいる私が幽霊かどうか、君の体で確かめてあげましょう。」 そう言うと、『青の通り魔』はトライアル・メモリの持つ超高速移動でアクセルに襲いかかる。 突然の攻撃に吹き飛ばされ、体を壁に叩きつけられるアクセル。 一方の『青の通り魔』は、白井との戦いの時のように闇から闇への高速移動をしてアクセルからの捕捉を逃れていた。 「くそっ・・・フィリップの言ったとおり、これが必要のようだな。」 起き上がるアクセル。 そして、フィリップから手渡されたデンデンセンサーをどこからか取り出すと、ヒート・メモリを挿入した。 HEAT!MAXIMUM DRIVE!! 続いて、今度は自身のトライアル・メモリを抜き、代わりにデンデンセンサーの疑似メモリをドライバーに挿入する。 DENDEN! メモリから流れるガイアウィスパー。 この音を確認すると、アクセルはデンデンセンサーを空高く放り投げるのであった。 空高く跳ぶデンデンセンサー。 そして空中で一時停止すると、上空からヒート・メモリの力を利用した熱源探知を行ない、 そのデータを即座に疑似メモリを通じてアクセルへと転送するのだった。 「・・・そこかっ!!」 『青の通り魔』の所在を突き止めたアクセルがエンジンブレードにルナ・メモリを装填して構える。 LUNA!MAXIMUM DRIVE!! 勢いよく振り下ろされるエンジンブレード。 剣先からは青色に輝くエースラッシャーが放たれ、引き寄せられるように一直線に『青の通り魔』に向かっていく。 そして、ついには『青の通り魔』を捕らえ、大爆発を起こすのであった。 「やったか・・・。」 そう言って、エンジンブレードからルナ・メモリを抜くアクセル。 だが・・・。 「君はお忘れのようですね、私の能力のひとつに『幻影を作り出す』能力があったことを・・・。」 突然、アクセルの背後から聞こえてくる声。 振り向こうとするアクセルだったが、その隙を狙って放たれた『青の通り魔』の一撃がアクセルと捕らえ、 彼はエンジンブレードを手放してしまった。 『青の通り魔』はエンジンブレードを拾い上げ、倒れこむアクセルのもとへゆっくりと近づきながら言う。 「もうひとつ、君が行なった熱源探知・・・確かにすばらしいアイディアですが、所詮は虫けらの考え。 私の『冷気発生』能力の前には意味を成さない代物ですよ。」 ついに、アクセルの目の前まで迫る『青の通り魔』。 「何故・・・何故だ・・・お前は・・・俺が倒したはず・・・。」 「そう、確かにあなたはトライアルの力を手に入れ、そして、私のウェザーのメモリを破壊した。 だが・・・『ウェザーのメモリを破壊した』からと言って、それが『私を倒した』ことには繋がらないのですから。」 「どういう・・・ことだ・・・?」 「簡単なことですよ。冴子くんの部下に『私』を演じさせただけのこと。 ちょうど、彼女の部下のひとりがダミーのメモリの持ち主でしてねぇ・・・。」 「何だと・・・。」 「そこで、私は彼に不必要になったウェザーのメモリを譲渡し、風都を出ました。 ウェザーのメモリではテラーの力に勝てないと分かった今、さらに強いメモリを手に入れる必要があったのでね。 そんなある時、私はこの学園都市で極秘に開発されていたT2ガイアメモリのことを知り、 そのひとつをとあるお方から譲ってもらいました。」 そう言いながら、『青の通り魔』は自身の耳から出現したトライアル・メモリを引き抜く。 変化する体。 そして『青の通り魔』は、山高帽を被った紳士へと姿を変えた。 「そして、私はついに手に入れました。 君たち仮面ライダーや園崎家の連中が持っているような古いガイアメモリには無い、頂点ともいうべき力・・・最強の力をね!」 高らかに叫ぶ男の姿を見るアクセル。 その姿は間違いなく『奴』であった。 かつて自分の家族の命を奪い、そしてウェザー・ドーパントとして仮面ライダーたちと死闘を展開したあの男・・・。 「井坂・・・ 深紅郎・・・。」 つづく
https://w.atwiki.jp/crossnovel/pages/122.html
仮面ライダーディケイド VS とある魔術の禁書目録 第三話「混ざりゆく世界」 ◇ 「アンチスキルが動けないって、どういうことなんですか?」 風紀委員活動第一七七支部。 そこで御坂美琴はメガネを掛けた高校生のジャッジメント、固法美偉に詰め寄っていた。 士達……ディケイドがこの世界にやって来てからすでに一週間が経っている。 だというのに美琴達との戦闘以降、まともなディケイドの情報は掴めていない(ある学生寮付近で謎の戦闘跡があったが、ジャッジメントに知らされぬまま処理されている)。 その原因の一つとして、アンチスキルの動きがほとんどないというのがあげられる。 同じ治安維持組織と言えどもジャッジメントは学生のみで構成されている、学園都市の踏み込んだ箇所への捜査権限は無く、アンチスキルに任せざる負えない部分もあるというのにこれではどうしようもない。 「落ち着いて御坂さん、こっちでも確認を取ってるんだけど、どうにもアンチスキルの命令系統が何者かにいじられてるらしいのよ」 「そんな、アンチスキルの命令系統に手を出せるなんて……まさかそれもディケイドの仕業なんですか!?」 「そこまでは何とも言えないわ、ただ、そんな状態で下手に動いたら逆にディケイドやスキルアウトの犠牲になるだけ……わかるでしょう?」 犠牲になるとまで言われては美琴は何も返せない。 それでもディケイドを放っておく形になっている現状に納得できない顔をしているのを見て、黒子が横から話に入ってくる。 「スキルアウトと言えば、連中、最近また動きが活発になってるらしいですの」 「ああ……その話なら聞いたことあるわ、何でも能力者が何人か行方不明になってるとか」 黒子の話に固法の表情が若干曇る。 一時期彼女自身も能力者であることを隠してスキルアウトに入っていたことがあり、その時所属していたスキルアウト関連の事件がつい一月前にあったばかりだ。 やっていることも能力者狩りと、前と同じ事もあり彼女にとってはあまり好ましい話題ではないのだろう。 「あ、白井さん白井さん」 「なんですの初春?」 部屋の奥から黒子を呼びつける声が聞こえ、棚で仕切られた奥を覗き込む。 そこで一台のパソコンを操作している少女、初春飾利は画面をじっと見つめながら口を開く。 「丁度今スキルアウトの事件について調べてたんですけど」 「連中のアジトでも見つけたんですの?」 側まで歩み寄り画面を見つめる。 初春が纏めた情報の文書へ目を通し、その内容に表情を厳しく変化させた。 「この情報、信用できますの?」 「ネット上の目撃証言でしかないですけど、スキルアウトによる被害の位置とは合ってます」 「……まだ詳しい位置までは公表してないはず、ということは信頼性は高いですの」 「ちょっと、何の話よ?」 二人の話に焦れて美琴が問いかけ、黒子はしばらく悩みそれに答える。 「能力者狩りの目撃情報ですの……スキルアウトを、ディケイドが率いていたと」 「何ですって!?」 ◇ 光写真館。 その一室で士は右手の包帯をゆっくりと外していく。 「士君、どうですか?」 「……問題ない、もう治った」 軽く拳を握り感触を確かめてからの言葉に、夏海はほっと息と吐く。 「だけどこれからどうする? もう迂闊に外にも出れないぞ」 「士は言うまでもなく、僕らもその仲間とすでに認識されてしまっているからね、お宝も探せやしない」 この一週間、士たちは何の行動も取れていない。 学園都市の監視は厳しく(何故か光写真館の内部までは監視の目が届いていないのだが)、少し外に出るだけで無人兵器らしき物が睨みを効かせてくる。 恐らくは鳴滝の仕業であろうディケイドの悪評を何とか払拭したいところなのだが、動くことができなければどうしようもない。 ……あるいは、彼らを追跡するものが無人兵器のみだという不自然さに気づいていれば、また話は別だったのかもしれないが。 「でも、ライダーの世界を巡っている時もディケイドは敵視されていたけど何とかなりましたし、今回だっていつものようにやれば大丈夫ですよ!」 「いつものように、ね……いつもはその世界のライダーの側で行動してたよな」 「そうですよ、だから今回も」 「で? この世界のライダーに当たる人物とやらは一体誰で、ここから動くことさえままならない状態でどう見つける?」 「……どうしましょう?」 乾いた笑いで返す夏海に大きくため息を吐く。 その時、奥のキッチンから一人の老人、光栄次郎が人数分のホットケーキを持ってやってきた。 「まあまあみんな、難しく悩んでるだけじゃまいっちゃうよ、ほら、これでも食べなさい」 「おっ、遠慮なくいっただきま~す♪」 「ねぇねぇ、困ってるなら私と夏海で調べてきましょうか?」 考えるの事をあっさり放棄してホットケーキへと向かうユウスケの頭上を小さな銀色のコウモリが通りぬけ、士達の前で羽ばたきながら意見を出す。 「キバーラ、協力してもらえるんですか?」 「別にもう鳴滝様に味方する理由もないしね~、今の私は夏海のみ・か・た♪」 夏海の周りを飛び回るキバーラを見ながら士は考える。 ライダーの世界を旅していたころと違い、今の夏海は戦う力がある。 そして恐らくはまだ士の仲間として認識されていない、現状で唯一動ける人物だ。 「けど夏みかんじゃな……」 「何言ってるんですか士君! ここは私に任せてください!」 「そんな心配しなくても大丈夫よぉ、私だってついてるんだしぃ」 「はぁ……仕方ないな、無茶はするんじゃないぞ」 仕方ないといった様子で頷く士に、夏海ははりきってキバーラと共に学園都市へと繰り出して行く。 その様子を見ながら、士は真剣な表情で思考を巡らしていた。 ◇ 狭い路地。 昼間だというのに周囲の建物に遮られて日も入らず、路地の外からでは何が起こっているのか見ることさえできない。 そんな、助けがやってこないのが当たり前の世界で一人の男が複数の人間に取り囲まれていた。 「スキルアウトか……! だが相手が悪かったな!」 男が不適な笑みを浮かべたままその場で拳を振るうと、明らかに間合いの外にいたはずのスキルアウトの一人が見えない力を受けて吹き飛ばされる。 「能力者を甘くみるなよ!」 彼の能力はレベル3の念動力【テレキネシス】。 拳を動きと同じ軌道を取る『力』を自身の視界内に生み出すことができる能力だ。 この能力なら最小限のモーションで相手を倒すことができ、多数の相手だろうと遅れはとらない。 自分の優勢を確信する男だったが、スキルアウトはまったく怯んだ様子がなく、不気味な笑みを浮かべながら包囲の輪を狭めてくる。 「な、何だこいつら……」 言い得ぬ悪寒を感じながらも能力を発動しようとするが、それより先にスキルアウトが動きを見せた。 「――っ!?」 男が息を飲む。 自分を取り囲んでいた人間が一瞬にして緑色の異形へと姿を変えたのだから無理もない。 能力者の中には自分の姿を変えたり、相手に自分の実体を見せないようにする者もいるがスキルアウトは無能力者の集団、まさか全員がそんな能力を持っているはずもない。 「馬鹿な、スキルアウトが能力を……!?」 思わぬ出来事に後ろへ下がりかけ、いつの間にか真後ろにいたスキルアウトに驚きながら振り向く。 「くそっ、能力者だろうが関係――」 思考を落ち着かせる間もなく拳を構え、能力を発動する寸前、気づく。 周囲のスキルアウトの姿が異形の怪物から再び変わり、人間の姿に……自分と寸分違わぬ姿へと変化したことに。 「な、んだ……何なんだ、お前らの能力は!?」 「俺か? 俺の能力は……」 目の前のスキルアウトが拳を振り上げる。 「レベル3の、テレキネシスだよ!」 「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 ◇ 「自信満々で出てきたのはいいけど、何も見つからないわねぇ」 「そうですね……スーパーショッカーの怪人もいないみたいですし」 士には大見得を切ったものの、夏海たちとて行くべき宛てなどありはしない。 とはいえ何の収穫もなく戻って士に嫌味を言われるのも面白くない、というわけで無目的に歩き回るだけの時間が続いている。 「あれ? あの人達って……」 ふと視線を上げると、士と戦った二人の少女が話しているのを見つけた。 丁度同じタイミングで向こうもこちらに視線を向け目があってしまう。 咄嗟に身構えるがそのまま視線を外され、自分のことを覚えていないのだと気づく。 あの時二人の目は士に集中していた、隣にいた夏海には気付かなかったのだろう。 ほっとしながら早く立ち去ろうとした時、近くの路地から悲鳴が聞こえてきた。 「お姉さま!」 「わかってる!」 黒子と美琴は即座に反応し路地悲鳴の下へと駆け出していく。 「キバーラ、私たちも!」 「いいの? 下手に関わって士の仲間だってバレたら大変よ?」 「でも、放っておけません!」 「まぁ夏海がそういうならいいけどね~」 二人の後をついていく形で夏海が走り出し、その直後路地から一人の男が飛び出してきた。 全身をボロボロにしたその男は黒子の付けているジャッジメントの腕章を見ると這いずるようにして近づき、怯えた表情で口を開く。 「た、助けてくれ! あいつら、ただのスキルアウトなんかじゃない……!」 「落ち着いて、今救急車を呼びますの」 「黒子、その人お願い!」 「ちょっ、お姉さま!?」 男を黒子に任せ、美琴は単身路地へと飛び込んでいってしまう。 後を追いたいが痛めつけられている男を放っておくわけにはいかない、黒子が悩んでいる間に、夏海はその横を駆け抜ける。 「!? 待って、この先は危険ですの!」 「大丈夫です、あの人は私が守ります!」 「ちょっと……ああもう、何でこう一般人がジャッジメントより危険な場所に行くんですのー!」 ◇ 路地に入った美琴は目の前の光景に言葉を失っていた。 ついさっき助けを求めてきた男、その男と寸分違わぬ姿をした男が二十人近くいるのだ。 「何こいつら……能力者……?」 「常盤大の制服か、いいねぇ……お前、レベルはいくつだ」 男の一人が美琴へと問いかける。 まるで品定めをするかのような視線に顔を歪め、パリパリと火花を散らしながら答えを返す。 「レベル5、能力はエレクトロマスター」 「なっ!? まさか、常盤大のレールガ――」 言い終わるよりも先に放たれた電撃が男たちをなぎ倒す。 改めて気を失った男を見るが、やはりその姿はどれも同一だ、その奇妙な光景に眉を顰めつつ黒子と連絡を取ろうと踵を返すが、背後で何かが動く気配を感じ再び振り返る。 「……あんたがこいつらの親玉、ってとこかしら?」 路地の奥からムカデを模した怪物、ジオフィリドワームが美琴へと敵意を剥き出しにしながら現れる。 前髪から電撃をパリパリと放って威嚇しながらいつでも動けるように重心を低く―― 「キバーラ! 変身!」 「はいは~い、へ~んしんっ♪」 「えっ!?」 美琴の横を駆け抜けながら、夏海はキバーラを前に翳して意識を集中させる。 キバーラから無数のハートが舞い夏海を包み、その中から白い甲冑を纏い赤い瞳をした姿へと夏海は変身する。 仮面ライダーキバーラ、世界の破壊者となった士を止めるため、夏海が手に入れた戦うための力だ。 突然の乱入者に困惑する美琴には構わず、ジオフィリドワームへと組み付きその腕を抱え込む。 「夏海、離れちゃダメよぉ?」 「わかってます!」 密着状態での攻防を繰り広げるワームと夏海に美琴は焦れる。 美琴からは白い甲冑の女性が何者かはわからないが、自分の味方をしてくれているのは確かだ。 ならば共闘するべきなのだろうが、こう密着されては電撃の攻撃で巻き込んでしまい動きがとれない。 「ちょっと、離れてくれないと巻き込むわよ!?」 「離れたらダメなんです! 私じゃクロックアップに対抗する手段が――!?」 「夏海! こいつ、このまま――」 キバーラの言葉が途中で消え去る。 ワームが夏海に掴まれたままクロックアップに入り、美琴の前から去ったためだ。 その場に残された彼女はまったく掴めない状況に頭を抑え、直後起きた現象にうんざりとした表情を作る。 「今度は何よ……」 オーロラのような壁が現れ、そこから一つの人影が出てきた。 その人物は美琴が反応するより早く、自らのベルトに一枚のカードを挿入する。 「ディケイ……!」 『ATTACK RIDE BLAST!』 電子音と同時にライドブッカーから放たれた銃弾に、付近のガラクタを磁力で集め即席の盾を作る。 だが予想していた衝撃はなく、盾の影で様子を伺っていると周囲のスキルアウト達の体が爆発、四散した。 「な……!?」 ようやく先程の攻撃の狙いがスキルアウト達だったことに気づき、盾を解除して目の前に立っている『ディケイド』を睨みつける。 「あんた、なんて事を……! スキルアウトはあんたの仲間じゃなかったの!?」 美琴の怒号には答えず、ただ静かにライドブッカーを向けて引き金を引く。 再び放たれた銃弾を磁力によってビルの壁に張り付くことで回避、反撃として放った電撃はソードモードへと変形させたライドブッカーを前に突き出すことでかわされてしまう。 と、その行動に首を傾げる。以前戦った時は今のとは比べ物にならないレベルの雷撃をまともに受けたというのにダメージはなかった、ならば何故今回はわざわざ回避したのか。 (そういえば前の時は姿が変わってた……あいつの能力は、何か条件があるの?) 思考を巡らせ、その一瞬の隙に『ディケイド』は再びカードをベルトにセットし起動させる。 『KAMEN RIDE KIVA!』 「しまっ……また別のに!?」 黒い体に赤い装甲、黄色い瞳はコウモリの羽を思わせ、右足と体を覆う銀の装甲は何かを拘束するかのように鎖で縛られている。 キバ、運命の鎖に立ち向かう、気弱ながら心優しき青年が変身する仮面ライダーだ。 姿を変えた『キバ』へと電撃を放つがその攻撃が届くよりも早く『キバ』はその場から離れる。 自身の雷撃で『キバ』の姿を見失ってしまうが、美琴は常に発している電磁波の反射波により周囲の物体を感知することができる、すぐさまその位置を確認し、 (……!?) 振り返る暇さえ惜しみ、磁力を解除し二、三クッションを挾みながら地面へと降り立つ。 同時に強い力で砕かれた壁が美琴の周りに降り注ぎ、自分の判断が遅れていたらと背筋を震わせる。 先程まで自分のいた位置を見上げると、わずかに壁面からせり出た換気口に「逆さま」に立つ『キバ』が美琴の方を見上げながら新たなカードをセットしていた。 『FAINAL ATTACK RIDE KIKIKIKIVA!』 激しく鳴る電子音に反応し、右足を拘束していた装甲がはじけ飛ぶ。 内に収められていた血のように赤い翼が広げられ、重力に逆らった体勢のまま右足を高く振り上げ、地上の美琴へと「飛び上がる」。 その右足から感じる圧迫感に、美琴は理性で考えるより早く、自らの最強の技を放とうとコインを構え迎え撃つ体勢を取った。 『ATTACK RIDE BLAST!』 「ぐぁっ!?」 「な!?」 『キバ』と美琴の激突を妨害したのは横からの銃撃。 銃撃が放たれた方向を向いた美琴は、そこにいた人物に思わず一瞬動きを止めてしまう。 「まったく、夏みかんを追ってきたら面倒なことになってやがる」 「ディケイド……!? どうして、だってこいつも……」 「ああ? ……なるほどな、だいたいわかった、こいつが俺になりすましてこの街で悪さを働いてたってとこだろ」 「偽物……?」 美琴と士、二人の視線に晒されながら『キバ』は何も言わず更なるカードを取り出し戦う意思を見せる。 『FORM RIDE KIVA BASSHAA!』 『キバ』の右腕と体に鎖が幾重にも巻きつき、緑の装甲へと変質する。 瞳も同じ色へと変化し、右手には魚のヒレのを模した装飾が施された緑の銃が現れ構えを取った。 「ディケイドの力を使いこなしてるとはな……おい、下がってろ、後は俺がケリをつける」 「冗談! 私たちの街で好き勝手やられてんのよ、放っておけるわけないでしょう!」 「あのな……っておい、電撃はやめろ!」 急に強い口調で静止され、慌てて放とうとしていた電撃を解除する。 一瞬遅れて足元に違和感を感じ見下ろしてみると、一面が膝の辺りまでの深さの水で浸されていた。 士の警告が少しでも遅れていたら『キバ』だけでなく自分達も電撃を浴びることになっていただろう。 「な、何よこれ!?」 「キバの力だ、自分の有利なフィールドを作り出す」 「有利って、これじゃあいつだって動きにくい……」 「来るぞ!」 言葉を途中で遮り士は美琴の前に立つ。 同時に『キバ』が放った水弾をライドブッカーで切り払い、ガンモードで反撃しようとするが水面を滑るように動く『キバ』を捉えることができない。 「あんた、私を守って……?」 「魚人相手に水中戦は不利か、おい、ビリビリ中学生」 「んなっ!? あんたまでビリビリ言うな!」 「掴まってろ」 「え?」 『KAMEN RIDE SKY!』 美琴を抱き寄せながら士もその姿を変化させる。 深い緑のボディを茶色の装甲が包み、赤い瞳と同じ色をしたスカーフが風になびく。 スカイライダー、空を愛し、決して優しさを忘れない青年の変身する仮面ライダーだ。 『ATTACK RIDE SAILINGJUMP!』 「はっ!」 「きゃあああ!?」 セイリングジャンプ、スカイライダーの持つ重力低減装置による飛行能力だ。 水中から飛び出し、叫ぶ美琴には構わず水面の『キバ』を睨みつける。 「おい、その辺の屋上に置いておくから逃げておけ!」 「な……さっきも言ったでしょ! このまま放っておけない……っての!」 士の言葉を跳ね除け、空中から強烈な雷を『キバ』へと放つ。 バッシャーフォームの得意とする水中フィールドを作りだしたのが裏目に出た、持ち前の超感覚で雷撃の直撃こそ回避するが水を伝う電撃からは逃げられない。 たまらずフィールドを解除し膝をつく『キバ』を見て、ようやく美琴は満足な笑みを浮かべた。 「どうよ! 私だって戦えるっつーの!」 「なるほど、確かに少しは頼れそうだ、なら、今度は俺の力を見てもらおうか!」 再びビルの壁面へと張り付いた美琴へと声をかけ、一枚のカードをディケイドライバーで起動する。 『FAINAL ATTACK RIDE SSSSKY!』 「はあああああ!」 よろめいたままの『キバ』へと士は回転を繰り返しながら突き進む。 「ぐ……」 『FORM RIDE KIVA DOGGA!!』 『キバ』が呻きながらカードを起動させると、緑の装甲が剥がれ、両手と胴体を新たに紫の頑強な鎧が包み込む。 更に巨大な拳を模したハンマーが現れるが、それを手にする前に士の大回転スカイキックが炸裂し吹き飛ばされる。 地面を転がりながら、激しいダメージによって元の『ディケイド』に姿が戻るのを見て士と美琴の二人も地面へと降り立った。 「やったの?」 「まだだ、直前で装甲の厚い形態になって直撃を避けやがった」 二人は倒れている『ディケイド』へ慎重に近づいていく。 だがそれよりも早く『ディケイド』は立ち上がり、ライドブッカーを構えカードを起動する。 『FAINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE!』 士達と『ディケイド』の間に10枚のエネルギーの壁が浮かび上がる。 起死回生の一手としては甘い、それほど広くなり路地といえど、大きなダメージで動きが鈍っている状態での直線にしか飛ばない攻撃を回避できないほどではない。 美琴の腕を引っ張りながら射程外へと飛び、『ディケイド』が続けて起動したカードに仮面の下の目を見開く。 『ATTACK RIDE ILLUSION!』 ファイナルアタックライドの予備段階のまま『ディケイド』が三人へとその数を増やす。 カード名こそ「幻」だが三人の『ディケイド』全てが実体を持っていることを士は知っている、この路地では三発のディメンションブラストを回避しきることは不可能だ。 「くそっ、間に合え!」 『FAINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE!』 相殺しようと士も動くが、イリュージョンのカードを使うだけの時間はない。 士の放った光弾は一発のディメイションブラストを相殺するが、残る二発は変わらぬ威力のまま二人を飲み込もうと突き進む。 「士!」 せめて美琴だけでも守ろうと、その体を抱き寄せ自分の影に隠そうとする士の耳に聞き覚えのある声が届く。 「ユウスケ!? ダメだ、来るな!」 通りからトライチェイサーを駆って来たユウスケに警告するが、何を思ったか逆にスピードを上げて士達の横を抜けエネルギーの本流の前へと飛び出していく。 ディメイションブラストがユウスケを飲み込もうとした瞬間急停止、トライチェイサーの後部に乗っていた男が前に出てその「右手」を叩きつける。 「っだあああああ!!」 「な、なんであんたがここにいるのよ!?」 「イマジンブレイカーだと……何故貴様がディケイドの味方をしている!?」 ディメイションブラストを打ち消した男、上条当麻の姿を見て初めて『ディケイド』が言葉を発する。 その問いに答えたのは上条ではなく、『ディケイド』の背後、路地の奥からやってきた男。 「あえて理由を挙げるなら、お前は動きすぎたのさ」 「何……!?」 不敵な笑みを浮かべ話す男、土御門の背後には先程ワームと共に消えた夏海とディエンドに変身した海東の二人が立っている。 その様子はどう見ても敵対しているようには見えず、『ディケイド』を共通の敵と認識していることを意味していた。 「ディケイドとして学園都市のあちこちで悪事を働いて、そっちの本物のディケイドに罪を擦り付ける。 悪くはなかったが、本物が身動き取れない時にまで能力者狩りをしてたら流石に気づかないわけがない。 まあそれ以前の問題として、ここのトップはあまりお前のことを信用してなかったみたいだがな」 「あ……スキルアウトが動かなかった理由って」 「もうすぐディケイドの手配も解除される、後はお前を捕まえれば万事解決ってわけだぜい」 笑みを深くしながらの土御門の言葉に『ディケイド』は悔しげに拳を強く握り締める。 その様子を見て、今まで黙っていた士が一歩前に出て声をかける。 「種明かしもオシマイのようだ、次は俺の質問に答えてもらうぞ。 どうしてお前がディケイドの力を使っているんだ……鳴滝」 「僕も疑問だね、士の評判を落とすためとはいえ、あんたがここまで自分で動くなんてらしくない」 士と海東の問いかけに『ディケイド』……鳴滝は小さく、低い声で言葉を吐き出した。 「私には、もう、何も残っていないのだ……」 「なに?」 「ディケイド! 貴様は必ず倒す……貴様も、貴様に味方する者も、全て!」 「なっ……待て、鳴滝!」 憎悪に満ちた言葉をぶつけると同時に、オーロラの壁が鳴滝の体を包み込みその姿を消してしまう。 鳴滝の持つ世界を越える力を知らない土御門達は慌てて周囲を見渡すが、当然見つかるはずもない。 「どういうことだ……鳴滝の狙いはあくまで俺だけだったはず……」 「それ以前に、あの人は士が世界を破壊するからそれを止めようとしてたんだろ? 何でまだ俺たちを狙ってくるんだよ」 「やれやれ、どうにも情報整理が必要なようだにゃー? それならこんなところで立ち話も難だぜよ」 変身を解除し悩む士達へと呼びかける。 鳴滝による誤解が解けたとはいえ一時は敵対していた者同士、互いに話しあう必要はあるだろう。 「……そうだな、一度戻るとするか」 ◇ 名も無き荒野。 誰にも知られず、誰の記憶にも残っていないその場所に彼は立っていた。 くすんだ色の帽子をかぶり、丈の長いコートを羽織った初老の男、鳴滝はそのどこまでも続く荒野を遠い眼で見つめ続ける。 その右手に持っていた物に視線を落とし、強く握り締める。 それは一本のメモリースティックだった。 「D」の文字が記されたそのメモリーから、鳴滝の意思に呼応するかのように電子音が流れる。 「貴様だけは、絶対に許さん……!」 『DECADE!』 第三話 END NEXT STORY「その幻想を破壊せよ」
https://w.atwiki.jp/mncorelay/pages/236.html
「いいだろう。 殺し合いの中で、貴様も魔神の本質を思い出すがいい!」 プチリレーより出演。 ディガルツ=アヒャンティアがフルネームらしい。 緑色の水晶で変身できる。 ちなみにこの欠片はデフラグさんを起動させるエネルギー源である。 風の魔神であり、封印状態でもMP100消費技を使える。 通常攻撃は風属性つきなので、見た目以上に火力がある。 HPは430と高め、攻撃は381と低くなく、全体攻撃まで使える。 だが、クリティカル率が低く全体的に能力はパッとしない。 闇属性の術を覚えるが精神は低い。 固定ダメージの技を覚えるが、通常攻撃の方が強い。 装備がさほど強くない。 等、微妙なキャラである。 早い話が技と装備に恵まれていない魔神。 使いづらい。 ちなみに本来ガチガチの悪役だが、主人公側になったことで台詞が悪役っぽくなくなっている。 きれいなディガルツである。 ボスとしても登場。 四体の無限に復活するお供を連れて現れ、襲いかかってきた。 が、直前の三バカやその後に控えるジラネーヨの方が強く、微妙な印象しか残らない。 同時期のゲストが強力な斧使いであるため、比較してなおさら弱く感じる。 これはひどい。 原作初期のモナンとモラーンだけで戦わなければいけないバージョンでは鬼畜だったなぁ…メッセージが流れてようやく勝利かと思ったら「ここから本気出す」展開だし -- (名無しさん) 2016-11-05 16 52 31 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/crossnovel/pages/107.html
空から降りてくる銀色の怪人。 その怪人は姿を変える、士たちには見覚えのある姿だ。 仮面をつけ奇妙な形をした銃を持った戦士、仮面ライダーディエンドだ。 ようやく来たか、と士はため息混じりに呟きながら椅子から腰をあげる。 後ろではユウスケとプリキュアたちが何時襲いかかれても反応出来るように身構えている。 「貴方……!」 「おっと、お前らは話したいことは山積みだろうがな。悪いが直ぐに終わらせて貰うぞ」 『全てを一つに……!』 「あんまり、こいつはいい気がしないんでな」 士とフュージョンが同時に腰元からカードを取り出す。 士は一枚のカード、フュージョンは四枚のカード。 それぞれがドライバーにカードを挿入し。 「変身!」 士はキレのある声を上げ、フュージョンは無言でトリガーを引いた。 ――――― KAMEN RIDE ―――――― ―――――― DECADE ――――――― ――――― KAMEN RIDE ―――――― ―― BLADE GALLEN CHALICE RENGEL ―― 仮面ライダーディケイドへと、士は変身する。 パンパンと手を払いながら、フュージョンを見据える。 ブレイド、ギャレン、レンゲル、カリスの四人のライダーをフュージョンは召喚する。 吸収したディエンドライバーを使った『カメンライド』だ。 知識を元に自らの分身として作り出したレプリカとは強さが違う。 その四人のライダーがそれぞれのプリキュアたちへと向かっていく。 露払いと言うのだろうか、四人のライダーによって距離を取られディケイドとクウガと夏海の三人とフュージョンが向かい合う。 『仮面ライダーディケイド……強き力の持ち主……私と、一つに……!』 「やれやれ、そのためにこんなことをするとはな……ユウスケ、下がってろ」 「士!」 「一対一が好きなんだろ? お前は夏みかんと一緒に別の敵を警戒してればいい」 戦闘力のない夏海のことを言われるとユウスケは何も言えない。 士の言うとおり万が一他にも敵がいた場合、最も危険なのは夏海だ。 渋々といった様子で下がっていく。 「さて……」 そのユウスケの様子を見てから、フュージョンへと向き直る。 だが、フュージョンはディエンドライバーのトリガーを引き既に攻撃を行っていた。 未だに変身すらしていない士に向かって、だ。 これで仕留めた、とはさすがにフュージョンは思わない。 海東大樹の記憶の中にあった『仮面ライダーディケイド』はそれほど簡単な相手ではない。 それに答えるように、前方から機械音が響いた。 ―――――― KAMEN RIDE FAIZ ――――――― ―――――ATACK RIDE ACCEL FORM ―――――― 「ったく、気の早い奴だ」 ファイズのアクセルフォームへと変身してフュージョンの攻撃を避けていた士。 それどころかフュージョンの後に回っている上に、追撃と拳を振るう。 アクセルフォームの超高速運動はたった十秒間だが、フュージョンを仕留めるには十分な時間だ。 『ふん……』 「なっ!?」 だが、フュージョンは液体状になることでその超高速の攻撃を防ぐ。 この一撃で動きを止め、ファイナルアタックライドにより決めようとしていたディケイドにとっては予想外の出来事。 その動揺に突き込まれフュージョンの振るう拳によって吹き飛ばされる。 「ちっ!」 衝撃を逃がすように柔らかく着地しながら、ディケイドは仮面ライダー響鬼のカードを取り出し素早くディケイドライバーに差し込む。 ―――― KAMEN RIDE HIBIKI ――――― 「はぁっ!」 『考えることは同じと言うことか……』 仮面ライダー響鬼となったディケイドは音撃棒・烈火を振り烈火弾を飛ばす。 グニャグニャと姿を変えるフュージョンには単純な打撃技よりも炎などの方が有効だと思ったのだろう。 フュージョンはディエンドライバーのトリガーを引きその炎を撃ち落とす。 「これでどうだ!」 烈火弾が撃ち落とされたことから、ディケイドは口から紫色の炎である鬼火を吹き出す。 だが、それも液体状となり位置を変えるだけで防ぐことが出来る。 所詮ディエンドと同じ戦法か、とフュージョンが内心で溜息をつくと機械音声が響いた。 ―――― KAMEN RIDE RYUKI ――――― 『むっ……』 フュージョンが液体状からディエンドへと姿を戻したときには既にディケイドの姿は消えていた。 なるほど、先程の鬼火は視界を封じるためのものかとフュージョンは得心する。 「はぁ!」 その得心すると同時にタコカフェの屋台の窓から仮面ライダー龍騎の姿をしたディケイドが飛び出してくる。 鏡の中の世界、ミラーワールドへと侵入することが出来る龍騎の力を使って奇襲をかけたのだ。 龍の頭部の形をした篭手・ドラグクローを嵌めた腕で殴りかかる。 『ぐぅ!?』 身構えていなかったフュージョンの後部に直撃する。 ここでようやく見せた隙を逃さないとディケイドは次々に拳と蹴りでフュージョンへダメージを与えていく。 そして動きが鈍ったと見破った瞬間に気合を込めた蹴りで、フュージョンを後方へと吹き飛ばした。 「はぁぁぁぁぁぁ……はあ!」 息を長く吸いながら引き下げた右腕を思い切り突き出す。 ドラグクローから一つの炎球が猛スピードで飛び出し、フュージョンへと突き進んでいった。 直撃を食らったフュージョンはのたうつように顔を俯かせる。 「これでトドメだ」 そのフュージョンを眺めながら、ディケイドは何処からかケータッチとコンプリートカードを取り出す。 コンプリートカードをケータッチへと差し込み、タッチパネルを順に押していく。 ―――― KUGA ――――― ―――― AGITO ――――― ―――― RYUKI ――――― ―――― FAIZ ――――― ―――― BLADE ――――― ―――― HIBIKI ―――― ―――― KABUTO ―――― ―――― DEN-O ―――― ―――― KIVA ―――― 低い機械音声で仮面ライダーの名が発声させられる。 ケータッチにあるそれぞれのライダーをモチーフにした紋章を押した後に、左にあるボタンを押す。 ―――― FINAL KAMEN RIDE ―――― 全てのボタンをタッチしたディケイドは相変わらず堂々とした姿で仁王立ちする。 フュージョンは先程の攻撃を受けてまだふらついている。 ―――――― DECADE ――――――― クウガ、アギト、龍騎、555、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ。 それぞれのライダーのカードが胸から両肩にかけて伸びるように現れたホルダーに収まっていく。 そして、その9つのカードに反応するようにディケイドのカードを額のホルダーへと差し込まれていく。 それを確認したディケイドは、素早くディケイドライバーを右腰へと差し替え、ケータッチを腰へと装着する。 マゼンダ色をあしらった黒と銀のスーツを着た戦士。 これこそが仮面ライダーディケイドの最強フォーム、コンプリートフォームだ。 「……」 遠目からフュージョンの戦いを見ていたプリキュアたちにも、コンプリートフォームからとてつもない力を感じ取れた。 自分たちが限界に追い込まれて出す全力と同等は間違いなくあるだろう。 そのコンプリートフォームとと相対しているというのにフュージョンは身じろぎもしない。 ディケイドはそんなフュージョンの様子が気にくわないのか、眉をひそめながらケータッチを取り出す。 フュージョンは、とにかく固い。 動きや単体での破壊力ならばディケイドの方が上だが、液体状の身体に対して打撃では確かなダメージが入っていないのだ。 だから最強フォームでさっさと終わらせる、そう目で語りながらケータッチのアギトの紋章をタッチする。 ―――― AGITO・FINAL ATACK RIDE・SHINING ―――― 「はあああああああああ……!」 ソードモードとしたライドブッカーを腰だめに構え、ディケイドは息を吐きながら構えた。 ディケイドによって呼び出されたシャイニングアギトもディケイドと同じように構える。 フュージョンは何が起こるのかを理解している。 だが、身動ぎ一つしない。 「はああ!」 ディケイドとシャイニングアギトが剣を振るう。 その斬撃は一閃の光となってフュージョンへと突き進んで行く。 フュージョンは、動かない。動かなければ斬撃を防ぐわけるがなく。 その攻撃はフュージョンへと見事に直撃した。 「……呆気ないな」 斬撃が確実に当たったことによりシャイニングアギトが姿を消す。 一人取り残されたディケイドは実感のこもらない言葉でポツリと漏らす。 それこそ言葉通り呆気ないのだ。 一度はプリキュアたちを圧倒し、ディエンドを吸収したにしては簡単すぎる。 だが、終わるときはそんなものなのかもしれない。 「士、危ない!」 そう思いながらディケイドはベルトに装着したケータッチを外していく時、後方からユウスケの声が響く。。 切羽詰った声色から、ディケイドは何が起こったと尋ねるよりも防御の姿勢に構える。 「地面に影が出来てる……上からか!」 そう呟きながら素早く上空へと視線を移す。 そこには巨大な水たまりのように姿を変えたフュージョンが居た。 斬撃を受けて出来た爆発の瞬間に、無事だった部分を液体状として素早く上空へと移動したと言うことか。 身体を液体化させれる敵とはこれほど面倒だったのか、とディケイドは軽く舌打ちをする。 (どう攻撃が来る……? まあいい、こちらから仕掛ける!) ディケイドはライドブッカーをガンモードへと変化させ、トリガーを引きフュージョンへと射撃する。 だが、ディケイドが攻撃を仕掛けたと同時にフュージョンは銀色の触手へと姿を変える。 数十本はあるだろう触手だ、その触手が猛スピードで迫っている。 幾つかはディケイドの攻撃で撃ち落とされたが、いかんせん数が違いすぎる。 触手のうちの一本がディケイドの腹部へと直撃し、動きが鈍った瞬間を狙い撃ちされるように次々と触手が襲いかかってくる。 「士! くそっ、変身!」 やがて痺れを切らしたようにユウスケが走りながらの変身で向かってくる。 そして、中心に居る触手たちの大本の、触手が枝ならば枝を支えている幹となる円球へと向かってライダーキックを撃つ。 リントで唯一の戦士としてグロンギなる敵と戦ってきたクウガのパワーは強大だ。 押されるようにフュージョンの動きが止まる。 ディケイドは『よくやったユウスケ!』と珍しく人を褒める言葉を発してもう一度ケータッチを取り出す。 ユウスケがクウガへと変身して戦局に参加した以上、夏海に危険が及ばないよう直ぐ様ケリを着けるべきだ。 故に、ファイズのブラスターモードかハイパーカブトで一気に焼き払うのが有効だと判断したのだ。 斬撃のような線の攻撃ではなく、超火力による面での攻撃。 手馴れた動作でケータッチのボタンを押していく。 「……なんだ?」 だが、一向にケータッチは反応しない。 何が起こったと目を丸くさせながら、何度もボタンを押すが一向に反応を示さない。 ネガの世界で手に入れたからこちらケータッチが使えなくなったと言う経験は一切ない。 「まさか……あの触手に力を吸い取られたのか!?」 ふとその可能性が思いつく。 フュージョンは全てを一つにと口うるさく言っており、その触手による攻撃を何度も受けた。 その隙にケータッチに触れられ、その力を吸い取られたのだとしたら。 力を吸い取ることが出来る、とはわかっていたがここまで簡単に吸い取られるとは思っていなかった。 『仮面ライダークウガ……なるほど、素晴らしい力だ……クウガ、貴様も一つに!』 「はぁ!」 そんなことを考えている隙にも、フュージョンはその姿をディエンドの姿へと変えてクウガと戦っている。 癪ではあるが、ここはクウガと手を組んで戦うのがベターだろう。 『仮面ライダーの力、頂くぞ』 「士! ここは協力して……」 「分かっている、いちいち言うんじゃない!」 そう言いながらディケイドはフュージョンの左へと向かって走り出す。 クウガはその姿を見て頷くとディケイドとは反対方向、フュージョンの右へと向かう。 挟み撃ちの形にするつもりなのだ。 「一気にいくぞ、ユウスケ!」 ディケイドはライドブッカーから一枚のカードを取り出す。 ディケイドの仮面をモチーフにした紋章が描かれたカードだ。 それはディケイドが持つ最高の威力、ディメンションキックを放つために必要なライダーカードだ。 カードをディケイドライバーを差し込む。 ―――― FINAL ATACK RIDE ―――― 「おう!」 クウガもそれに頷き、腰を落として光を右足に集めていく。 そして、その光が十分に集まるとフュージョンへと走り出す。 マイティフォームのクウガが持つ力を右足に集中させたライダーキックだ。 その二人のライダーが必殺技を放つ姿を眺めながらフュージョンは、僅かに身体を身構えるだけで動きはしない。 ――――― DE DE DE DECADE ―――― 「はああああああああああ!!」 二人のライダーの最高火力による挟撃。 並の怪人なら二回殺しても余りあるほどの威力だ。 フュージョンもその威力の恐ろしさは十分に分かる。 だからこそ、ライダー達の足との接触面を斜面のように変えて力を逃がしていく。 全ての力を防げるわけではない、ダブルライダーキックはそれほど甘いものではない。 だが、フュージョンは並の怪人ではない力を持っている上にエネルギーを吸収するというタイプだ。 『くっ……がぁ……あああああああああああ!!!』 苦しみに悶えるような叫びを上げながら、フュージョンの身体が膨らんでいく。 パワーを吸収しきれていないのか、とディケイドとクウガは判断してより強く足に力を込める。 エネルギーを吸収出来るとは言え、何時かはパンクは存在する。 その証拠にプリキュアたちの必殺技も吸収しきれなかったためにフュージョンは負けたのだ。 『はああああああああああああ!!!』 「なっ!?」 「うわぁ!」 だが、今はディエンドライバーとケータッチの力を吸い込んだ完全な状態。 そしてライダーキックも僅かに威力が流れている。 膨らんだ身体からエネルギーを弾け飛ばし、ディケイドとクウガにカウンターを食らわす。 『ふ、ふはははは! 素晴らしいぞ仮面ライダ―!』 僅かに息を切らしながら、フュージョンは吹き飛ばした二人の戦士の力を称える。 ディエンドライバーだけを吸収した、あるいはケータッチだけを吸収したフュージョンならば受けとめきれなかったかもしれない。 ゴキリゴキリと首を鳴らしながら、ディエンドライバーを天空へと飾す。 そして、一枚のカードをスロットに挿入し、機械音を響かせる。 ―――― ATACK RIDE BLAST ―――― 「ぐぅああ!!」 「おおっかぁ!!」 ディエンドライバーから飛び出た幾つもの弾丸がディケイドとクウガに追い打ちをかけるように降り注ぐ。 ライダーキックを弾かれたことによる反動で、身動きの取れない二人はまともに直撃してしまう。 それをフュージョンは冷ややかな目で見下ろし、僅かに一歩踏み出しディエンドライバーをある方向へと纏める。 その方向にはバラバラにしていたプリキュアたちが一箇所に集まりブレイドたちを押している。 フュージョンとしても十七人ものプリキュアをブレイドたち四人のライダーで倒せるとは思っていない。 とは言え、プリキュアたちも四人の仮面ライダーを相手では直ぐに倒せないだろう。 恐らく一箇所に集めて全員の必殺技で一網打尽にするはずだ。 フュージョンの予定通り、ブレイドたちはプリキュアたちを足止めした上に一箇所に集めている。 一枚のカードを取り出す。仮面ライダーディエンドをモチーフにした金色の紋章が描かれたカードだ。 そして、そのカードをディエンドライバーへと差し込み、ゆっくりとプリキュアたちへと銃口を向ける。 ―――― FINAL ATACK RIDE ―――― その機械音と共にブレイドたちの姿がカードとなっていく。 突如として消えた姿にプリキュアたちが戸惑いを見せるが、フュージョンは構わずにトリガーを引いた。 「くっ……危ない!」 ――――― DI DI DI DIEND ――――― ケータッチの力とプリキュアの必殺技とこの街に住む全ての人達の存在。 それらを吸い込んだフュージョンの力によって補強されたディメンションシュートは17人のプリキュアたちをなぎ払っていく。 不意打ちになったためブルームとイーグレットも満と薫もルミナスもバリアを張ることが出来なかった。 『きゃああああ!!』 巨大なビーム状となったディメンションシュートにより、プリキュアたちをなぎ払っていく。 無防備に構えていた所への最大火力だ、無事で済むわけがない。 フュージョンは吹き飛ばされたプリキュアたちを眺めて満足するように頷く。 そして、銀色の身体を一つの塊へと巨大な球体へと変えていく。 その身体をゆっくりと上空へと登っていき、十メートルを超えた瞬間にドーム状へと球体から柱が降り注ぐ。 「これ……って……!」 この風景に既視感を覚えたキュアピーチが呟く。 あれはフュージョンがプリキュアを取り込もうとした時と同じだ。 だが、ピーチは立ち上がるのが精一杯だ。 「超変身……! とりゃああああ!」 ドラゴンフォームに変身したユウスケが、高い跳躍力を生かして空中に浮いた球体の上に乗る。 手に持ったドラゴンロッドで球体へと向かって差し込む。 『ぐぅ……!?』 「こいつでも……食らいな!」 ライドブッカーをガンモードに変化させ、銃弾でクウガのフォローを行う。 ディメンションシュートの直撃を免れていた、クウガとディケイドはフュージョンへの攻撃を開始する。 たとえボロボロの身体であろうと決して引かない。 その姿は確かに歴戦の勇士と呼ぶに相応しい姿だった。 だが、フュージョンもせっかくのチャンスを逃すようなマネは避ける。 ここで有効な戦略は何かをフュージョンは考える。 ディエンドの記憶を探り、何がこの二人に有効か、それを考え、直ぐに対策は見つかった。 『全てを、一つに……!』 水銀の球体となったフュージョンの身体から飛び出た十数本の触手。 ディケイドの銃撃、クウガのドラゴンロッドによる切り落としで幾つかの触手が切り落とされる。 だが、二人の身体にダメージを積もっていたこともあり、攻撃を免れた触手が存在した。 「きゃあ!?」 その触手は一直線に、安全だと思っていた位置に居た光夏海を絡めとっていた。 「夏みかん!?」 ディケイドは銃撃を中断させる、と言うより中断せざるを得なかった。 夏海を吸収せずに盾にするようにディケイドへと向けたのだ。 人質の形を取られてしまい、ディケイドだけでなくクウガの動きも止まり、その隙を狙われ振り落とされてしまう。 「くっ……夏海ちゃん!」 着地しながらフュージョンに取り込まれようとしている夏海へとクウガが悲鳴のような声を投げかける。 もう一度攻撃を仕掛けようとするが、ディケイドと共にフュージョンの触手に追撃を受ける。 ダメージの深い身体に追い打ちをかけられ、ついに膝をついてしまう。 「士くん! ユウスケ!」 それを確認した後に、フュージョンは助けを求めるように、けれども攻撃を受けた二人を心配するような叫びを上げる夏海を取り込んだ。 『もう一度、弱らせる……さすれば、仮面ライダーとプリキュアは一つに……』 低い声を出しながら、フュージョンは再び仮面ライダーディエンドの形を取る。 そうして、腰元から一枚のカードを取り出す。 カードの絵を見なくても分かる。 フュージョンはディメンションシュート、もしくはブラストを撃ってくる。 「皆! 一箇所に集まって!」 ボロボロの身体に鞭を打ってパッションが叫ぶ。 パッションの変身アイテム、アカルンが持つ固有能力の瞬間移動。 それを使って逃げることは出来る。 倒すことができない以上、逃げざるを得ないと判断したのだ。 それに反論する人間はいない、何よりも全員が心身ともにボロボロだった。 ―――― ATACK RIDE BLAST ―――― だが、一瞬だけフュージョンの方が速かった。 機械音が響き、フュージョンの持ったディエンドライバーから幾つもの光弾が発射される。 「超変身!」 その瞬間、パッションへと向かっていたクウガが素早く背後へと切り返す。 ドラゴンフォームから耐久に優れたタイタンフォームへと姿を変え、タイタンソードを手に持ちアタックライドを切り払っていく。 とは言えタイタンフォームはパワーとスタミナは頭が一つ抜けているが、瞬発力は他のフォームに劣る。 全てを切り払えるわけがなく、幾つか被弾する。 だが、クウガは倒れなかった。 「ここは俺に任せて先にいくんだ! 早く!」 「ユウスケ!」 「安心しろ、士! 俺だって仮面ライダーだ! 絶対に夏海ちゃんやここの店主さんを連れ戻してくるさ!」 「おい、ユウスケ!」 士はその言葉が強がりだと分かる。 確かにクウガの力の源であるアマダムは強力なものだ、ディケイドの変身の核となるディケイドライバーと比肩するほどに。 だが、今のユウスケはそれを限界まで引き出すことは不可能だ。 ユウスケが未熟なのではなく、アマダムとはそれほど危険な代物なのだから。 士の声を無視するようにクウガは走り出す。 アカルンによる瞬間移動は既に準備が出来てしまっている、今から中止するのは不可能だ。 「ユウスケ!」 「さあ、来い!」 クウガが腰を落とし、真っ赤な複眼でフュージョンを睨みつけ、後方から士の声を聞いたその瞬間。 プリキュアたちはアカルンの力により、その場から消えていった。 ◆ ◆ ◆ . 丈の長い地味な色をしたコートと同色の帽子を被った初老の男が時計台の頂上にいた。 男の名は鳴滝、それが本名であるのか偽名であるのか、そもそも名前と言うものがあるのかすら知られていない謎の男だ。 これまでディケイドが旅したあらゆる世界に現れ、含みのある言葉をディケイド投げかけてきた男。 その鳴滝が眼鏡越しから暗闇に染まった世界を見下ろしていた。 「こうしてまた一つの世界が崩壊し……他の世界も危険に晒されてしまう……!」 誰に言うでもなく思わず口からこぼれてしまったと言った様子で、鳴滝は憎々しげにつぶやいた。 このプリキュアの世界は本来仮面ライダーが現れるわけがない世界だった。 あの騒ぎの中心にいるフュージョンも、ミラクルライトの力を吸い込もうともプリキュアに敗れるはずだったのだ。 だが、フュージョンは仮面ライダーの力を手にいれたことからプリキュアをも超える力となってしまった。 ディエンドの用いるカメンライドのようなライダーの召喚は行えないが、その知識から幾つものライダーもどきを作り出せるほどの力だ。 とは言え、そのライダーもどきたちはプリキュアやディケイド、クウガに敵うほどの力は持ち得ていなかった。 レプリカである上に、フュージョンが自身の力を分割させたのだから当然であろう。 カメンライドという手もあるが、あれにも限界がある。 だが、それもクウガのアマダムとケータッチの力を吸収してしまった今は少し事情が変わってくる。 アマダムほどの強大な力の源と一つとなったフュージョン、それが作り出すライダーのレプリカならばかなりの力を持っているはずだ。 しかも、それは何度も再生する。 幾らそのレプリカライダーをプリキュアたちが倒し続けようと、その隙にフュージョンは様々な力と一つとなっていくだろう。 そして疲労し弱体化してしまったプリキュアたちを、万全の力を持って叩き潰すはずだ。 「おのれ、ディケイド……!」 ギシリ、と鳴滝は歯を強く噛む。 ディケイドがいなければこんなことにはならなかった。 シンケンジャーの世界に続き、プリキュアの世界にもライダーが生まれてしまう。 全てはディケイドが、破壊者であるディケイドが現れたからこそ。 鳴滝は顔を怒りなどと言う言葉では生ぬるいほどの激情に染め上げる。 そして、全ての元凶であるディケイドへと、胸の内から溢れでそうなほど渦巻く感情をぶつける様に叫んだ。 「おのれ……おのれディケイドォ!」 To be next――――――――――――――――
https://w.atwiki.jp/mncorelay/pages/176.html
ハンマーの追加効果。 敵が使ってくるととても厄介な状態異常。 リメンバー・仲間リレー。 うまくすれば敵をはめ殺せる。 驚きとの扱いの違いは、何とも。 マイダスメッサー? なにそれ。 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/crossnovel/pages/104.html
第2話 ムスリムの矜持 翔太郎は、先の戦いでナワルを取り逃がしたことを悔いつつ、カリールとの待ち合わせの場所でカリールを待っていた。 ナワルはもう自分の知っているナワルではない。シスターの少女の首を締め上げている時の顔を見て分かった。 なぜあそこまでナワルは十字教に敵意を持っているのだろうか?過去になにがあったのだろうか?二日前の捜査では フィリップにナワルの過去を調べろとまでは言わなかった。カリールに聞いてみるのがいいだろうか? 「翔太郎、遅れて済まない」 カリールが来た。カリールはナワルの弟で、今年二十歳になったばかりだと以前ナワルから聞いた。顔立ちはナワルを少し幼くした ような感じの青年だ。 「翔太郎、念の為に僕も来たよ」 「フィリップ、お前もか?」 フィリップもカリールに同行して学園都市に来た。フィリップは学園都市を直にこの目で見たいので来たのだ。 このフィリップの検索好きぶりには翔太郎も時々参ることがある。大方「地球の本棚」で学園都市のことを調べて興味が沸いたのだろう。「地球の本棚」とはフィリップの精神世界にあるアカシックレコードのような物だ。真っ白な空間に無数の本棚が並んでおり、それらが「地球の記憶」のデータベースとなっている。フィリップが検索をかける(キーワードを唱える)と自動的に本が選抜されていき、任意の情報が入った本に絞り込むことができる。このフィリップの能力があればこの学園都市に存在する数多の能力者達の仲間に入れるだろう。 「翔太郎、この学園都市を調べたら色々興味深い物が出てきたよ。特に興味があるのはこの学園内にいる能力者達と、その能力なんだが……」 「おいフィリップ!今はナワルの捜索が先決だ!お前の検索趣味の時間じゃねえ!そんな事は後からでもいいだろ!」 大事な仕事の時にも関わらず、検索趣味全開のフィリップに翔太郎は呆れたように叱り付ける。 「……わかったよ翔太郎。彼を見つけないとまた犠牲者が出るかもしれないからね」 フィリップは学園都市の検索を渋々後回しにすることにした。 翔太郎、カリール、フィリップの三人は手分けして学区内を捜索し続けた。しかし、ナワルを見つけることはおろか、それらしい人間を目撃したと言う者は誰一人としていなかった。 「翔太郎、こっちにもそれらしい人を見た人はいなかった」 「こっちもだぜ!それよりなんだあの白髪のガキ!人が道尋ねてんのに悪態ついてきやがって!」 どうやら翔太郎は白髪頭の少年にナワルは見なかったかと自分の名刺を差し出して尋ねたら、口汚い言葉で悪態をつかれたらしい。しかし翔太郎を怒るのを我慢し、その場を後にした。その怒りがフィリップとの連絡で爆発しているようだ。 「翔太郎、怒っても仕方ないよ。それより白髪の少年って言ったよね?この学園のレベル5の能力者で似たような容姿の学生がいたような……、もしかすると彼の名前は一方……」 「ちょっと待て、フィリップ!」 翔太郎は目の前にいる自分に近づいてくる子供に見覚えがあった……。自分が助けたシスターの少女だ! 「とーま!この人なんだよ!この人があたしを助けてくれた人なんだよ!」 翔太郎が助けた少女はツンツン頭の男子学生と一緒だった。上条当麻だ。 「あんた……、インデックスを助けてくれた人なのか?」 「インデックス……、それがこの子の名前か?」 ◇ 「これでも食らいなさい!」 美琴は電撃をアクセル目掛けて放出する。しかし、掠っただけでアクセルは電撃の直撃をかわした。 (これが学園都市に存在しているという能力者か……、噂以上に強力だ) 照井は初めて見る学園都市にいる超能力に驚嘆していた。ドーパントでもない普通の人間が当たり前に能力を有し、その力はもしかするとドーパントに匹敵するかもしれないとまで思わせた。しかし、いくら能力を使うとはいえ生身の人間、自分の持つエンジンブレードの直撃を受ければ即死は間違いないだろう。アクセルの力で殺してしまうのはさすがに照井も気がひける。本気でいけば倒せるかもしれないが、手加減ばかりしていてはいずれこちらが 電撃娘の技の前に敗れてしまう。それにさっきから気になっていたことだが、この学生二人の目がどうもおかしい。生気がまるで感じられない。一言でいえば目が死んでいるような状態だ。それにこの容赦のない攻撃の嵐、もう一人の娘はテレポート能力で、ちょこまかと動き回り、こちらをかく乱してくる。 「あらあら、刑事さん。風都でドーパントを相手に渡り合ってきたという実力はその程度ですの?」 黒子は防戦一方のアクセルを挑発する。 (この娘の能力……、この娘の力はテレポートのようだが、物体を移動させることも可能のようだ。さっき針を電柱にテレポートさせていたが……、物質の固さは関係ないようだな。この力はこの装甲をも貫くかもしれん。電撃娘よりもある意味厄介だ。早めにこいつを黙らせなければ……!) 照井は黒子の想像以上の能力に脅威を感じ、美琴より先に黒子を倒すことにした。 「調子に乗るな!」 アクセルはエンジンブレードにエンジンメモリの一つであるスチームを素早く装填する。 『エンジン!スチーム!』 エンジンブレードの刀身から高温のスチームを放出し、自分の周りをスチームで覆う。敵をかく乱させる時に使う技だ。 「熱ッ!」 スチームの蒸気の熱さに当てられた黒子が一瞬怯む。その隙をアクセルは見逃さなかった。素早く黒子の後ろにジャンプする。 「悪く思うな」 「う!?」 アクセルは手刀を黒子の首筋に軽く当て、黒子はその場に倒れこむ。腕力が人間時とは比べ物にならないほど増大している変身状態で、本気で殴ると、黒子を殺しかねない。後で聞きたいこともあるので、気絶程度に留めておく必要がある。 「黒子!?あんたよくも!!」 美琴は黒子が倒されたことに激怒し、放出する電撃をさらに増やす。それが功を奏したのか、電撃がアクセルに直撃する。 「ぐぁ!」 アクセルは美琴の放った電撃の直撃を食らった衝撃で、倒れこむ。技の威力ではドーパントが放つ攻撃に劣らないものがある。避けているばかりではいずれ本当にこちらが倒される。 「これならどう!?」 美琴は両手を地面に置き、電流を地面に放つ。すると地面から巨大な砂鉄が大蛇の如く飛び出してきた。美琴は自身の能力である電気を使い、鉄骨を操ったり、コンピューターにアクセスするなど幅広い使用法ができる。単純に電撃だけが攻撃方法ではない。 美琴はアクセル目掛けて砂鉄を鞭のように振り下ろす。 「くっ!?」 アクセルは砂鉄の鞭をかわす。まさかこんな攻撃手段もあろうとは。ならばこちらも所持する技というものを見せ付けなければならない。アクセルはエンジンブレードにエンジンメモリの ジェットを差し込む。 『エンジン!ジェット!』 エンジンブレードの先からエネルギー弾を放出することができる。アクセルはエンジンブレードを振り、砂鉄の鞭目掛けてエネルギー弾を発射する。 エネルギー弾は砂鉄の鞭を破壊し、砂鉄は形状を失い、地面に落ちる。 「ったく!なかなかやるじゃないの!こうなったらあたしも本気になるしかないね!」 美琴は自分のポケットからコインを取り出す。こうなれば自身の最強技、超電磁砲(レールガン)で一気に決着を付ける。 「こちらも同じだ」 アクセルはエンジンブレードにマキシマムドライブのメモリを装填する。 『エンジン!マキシマムドライブ!』 美琴はコインに電気を集中させ、超電磁砲(レールガン)を放出する。その巨大な電撃は今まで放った電撃とは桁違いの威力であった。負けじとアクセルも、エンジンブレードから巨大なAの形をしたエネルギー弾を美琴の放った超電磁砲(レールガン)目掛け放つ。 二つの大技がぶつかり合い、凄まじい衝撃が周囲を襲う。 「きゃあ!」 「くぅ!」 二人は自分達の大技がぶつかり合うことでできた衝撃波によって、後ろに吹っ飛ぶ。しかし装甲に守られているアクセルの方が衝撃に強く、すぐに起き上がり、美琴の後ろに回りこむ。 「う、う……く、あいつは?」 美琴は衝撃波で吹っ飛ばされ、衝撃を止める為に、咄嗟に地面に電気を送り込み、即席の壁を作った。美琴は恐る恐る壁の向こう側を見るが、アクセルの姿はなかった。 「た……、倒したの?」 「残念だが違うな」 「え!?」 美琴ははっと後ろを振り向く。そこにはアクセルが仁王立ちしていた。 「ちぃ!」 「絶望がお前のゴールだ……!」 アクセルは電撃を放とうとした美琴に間髪入れず、手刀を美琴の首筋に入れる。 「う……」 美琴はアクセルの手刀により力なく地面に崩れ落ちる。 「手間をかけさせてくれる……」 アクセルは疲れきったように変身を解除する。 「み、御坂さん……、白井さん……!」 「ん?」 照井が声の方向に目を向けると、風紀委員(ジャッジメント)の認証を腕につけた、メガネをかけた女学生が立っていた。黒子と同じ風紀委員(ジャッジメント)第177支部所属で、黒子の先輩である固法美偉だ。 「この二人を知っているのか?」 「え、ええ……、貴方は風都署から来た照井竜警視ですか?」 「そうだが」 固法は自分の後輩達がはるばる風都から捜査協力に来た刑事に攻撃を仕掛け、あまつさえ戦闘したことに驚愕していた。立派な公務執行妨害、警官暴行罪だ。自分の後輩達が刑事と戦いを繰り広げている現場を支部のパソコンで目撃し、慌てて現場に急行したらご覧の有様だった。美琴、黒子が生きていることが奇跡のようだ 「詳しい話はそちらから聞かせてもらおうか……」 照井は鋭い眼光を固法に向ける。勝手に犯人に仕立てられ、尚且つ戦闘する羽目になったのだ。照井の怒りは収まってはいなかった。 「え、ええ……、とりあえず風紀委員(ジャッジメント)の第177支部に二人を運んでいいでしょうか?話はそちらで……」 「いいだろう」 照井は固法の要求を呑んだ。固法は全身から滝のように汗を流し、生きた心地がしなかった。 ◇ 「インデックスを助けてくれてありがとうございます。俺は上条当麻っていいます」 「俺は左翔太郎だ。こっちは相棒のフィリップ、こっちが今回の事件の依頼人のカリールだ」 当麻はインデックスを助けてくれたお礼として自分のアパートに翔太郎達三人を招待した。今回のインデックスを襲った相手を翔太郎が捜していると聞き、何か自分にも手伝えることはないかを聞いた。翔太郎も、自分は探偵で、連続十字教教会襲撃事件の犯人であるナワルを追っていることを当麻に話す。それに自分とフィリップが仮面ライダーに変身し、風都でドーパントと戦っていることも話した。 「例の連続教会襲撃事件……、その犯人がインデックスを襲った奴だなんて……。見つけたら只じゃおかねぇ……!」 当麻はインデックスを傷つけられたことで頭に血が昇っていた。必ず犯人を見つけて顔面にパンチの一つでも入れなければ気が済まなかった。 「落ち着け当麻。俺達が必ずナワルをとっ捕まえてやる。それにあいつはドーパントだ。お前の手に負える相手じゃない」 熱くなる当麻を翔太郎が宥める。 「俺にも一応力が……、いやそのドーパントに通用するかはわからないですけど……」 当麻は自分が幻想殺し(イマジンブレイカー)という能力を持っていることを翔太郎達に話す。今まで相手にしてきた魔術師、超能力者に対しては異能を打ち消す力を生かし、勝利を収めてきた。 しかしドーパントという新たな敵にこの力が通用するのかどうかは疑問だった。 「幻想殺し(イマジンブレイカー)か……、興味深いね……。あらゆる異能を打ち消す能力というのを是非見たいんだが……」 フィリップが幻想殺し(イマジンブレイカー)に興味を示す。フィリップは学園都市を検索した際に学園内に存在する様々な能力者の異能をも打ち消せる力があるとなればフィリップが興味を持たないはずがない。 「お、おいおい、フィリップ!また余計な検索だけはしないでくれ!」 翔太郎は慌てて幻想殺し(イマジンブレイカー)に興味を示すフィリップを制止する。捜査の時に余計な方向に脱線しがちなフィリップを止めるのは苦労する。 「あの人の目……、普通じゃなかったよ。過去に何人も人を殺してきた目。あたしにはわかるんだよ」 インデックスは暗い表情でナワルの恐ろしさを語る。確かにあれは殺人狂そのものの目だった。翔太郎自身も目撃している。 「だがナワルがああいう風になったのはお前達十字教のせいだろう?」 カリールがインデックスに冷たい視線を送りながら言う。今まで余り口を開かなかったカリールが口を開いた。 「お前達十字教は自分達がするあらゆることを正当化するんだからな。昔からそうだ。何人もの異教徒を血祭りに上げようがそれが正しいと思っている。お前達の教義には反吐が出そうだ」 カリールがインデックスの信じる十字教を罵倒し始めた。普段大人しそうな印象のあるカリールだけにこの言動は翔太郎も少し驚いた。 「カリール、お前、十字教が嫌いなのか?」 「ああ、大嫌いだ。この世から消えてほしいと思っている位にな」 カリールは十字教も、それを信じる信者も神父もシスターも全てが気に入らないのだ。 「当麻といったね。君はそのシスターの保護者なのか?だとしたら悪いことは言わない。そいつとは縁を切った方がいい。でなければ十字教のあらゆることを吹き込まれ、完全に手遅れになる。俺はナワルが殺人に手を染めるのは望んではいなと言った。しかし十字教徒が死ぬのことは歓迎しているんだ。あいつらが万単位で死のうが、億単位で死のうが俺にとって、いやムスリムにとってはこの上ない喜びだ」 カリールの心の内を知り、翔太郎は動揺を隠しきれなかった。ナワルを止めてほしいと涙ながらに訴えてきた昨日とはまるで別人だ。 「そんな……、人が死ぬのを望んでいるなんて……、まちがってるんだよ、そんなの」 「利いた風な口を」 カリールがインデックスの言葉が気に障ったのかインデックスを突き飛ばす。 「お前!インデックスに何すんだ!」 当麻がカリールに掴みかかる。 「おい!二人共よせ!」 翔太郎が揉み合う二人を強引に引き離した。 「カリール、俺は心底お前を見損なったぜ。人が死ぬのを望むなんてナワルのしていることとどう違うんだ!」 翔太郎はカリールの酷薄な思考に激怒する。ナワルも確かに以前とは違う人間になっていた。しかしカリールも一緒だ。兄弟二人共もう翔太郎の知っている人間ではなかった。 「翔太郎……、お前は自分の周りの人間が殺されて、何もするなと言われたら大人しく従うか?俺達ムスリムは奴らを許さない。君もよく奴等のことを調べるといい。そうすればおのずと答えがわかる」 カリールはそう言うと、当麻のアパートを出た。 「翔太郎……、これは僕達の想像していた以上に根が深いようだね……」 「ああ……」 翔太郎とフィリップは宗教という存在の底知れない闇を垣間見た。 ◇ 「うわぁあああ!あたし達は無実なのよーーーー!、…………は?ここは?」 照井に気絶させられ、風紀委員(ジャッジメント)の第177支部のソファに寝かされていた美琴は悪夢を見て飛び起きる。 「あ、お姉さま。お目覚めになられましたの?」 「く、黒子……!」 美琴は見た悪夢が夢であったことと、目の前に黒子がいることに胸を撫で下ろした。 「ようやく目覚めたようだな」 照井は飛び起きた。美琴をやっとかという風に見ながら言う。 「御坂さん、白井さん、自分達のしたことを覚えてる……?」 「あ、固法先輩。あたし達のしたこと?確かタハール導師に頼まれてジャスミンちゃんに第7学区の案内を……」 妙に神妙な表情の固法に聞かれ、美琴が自分と黒子がタハール導師からジャスミンの案内を頼まれたことを思い出す。 「俺と戦ったことは覚えていないのか……?」 「あ、先輩、この人誰?」 美琴は照井の姿を見ても初めて見るかのように答える。 「お姉さま……、とりあえずわたくしたちの行動を録画したパソコンの動画を見てください……」 表情が青い黒子が美琴にパソコンに録画されている動画を見るように促す。 「ん?動画が何……?」 美琴がパソコンの動画を見る。 「……え?、えええええぇええええええええええ!?」 その動画には自分と黒子が風都から来た刑事に攻撃を仕掛け、連続教会襲撃事件の犯人として拘束しようとし、あまつさえ戦闘を 繰り広げる様子が撮られているではないか。 「そ、そんな……!あたし全然記憶にない!!」 美琴は必死で覚えがないと言い張る。完全に公務執行妨害、警官暴行罪ではないか。 「覚えがないと言えばそれで済むと……?」 照井から放出される殺気を感じ取り、汗だくになる美琴と白井。そんなはずはない。自分達はこのような行為をするはずがない。この映像に映っているのは自分達の偽者に決まっている。 「御坂さん、白井さん。流石の私もこれは弁解しきれないわよ」 照井だけではなく固法からも殺気を感じる。絶体絶命という言葉が似合う美琴と黒子はただ表情を青くさせるしかない。 「お姉さま……」 「あ、あたし達どうなるの……?」 次回 学園都市を守る者達
https://w.atwiki.jp/crossnovel/pages/98.html
岩肌が剥き出しになった地面に、風が吹いて砂埃が舞った。 遠くで機械が稼働する音が響いて僅かに地面が振動する。 晴れ上がった青い空の下、幼い兄妹のカルロとアロエは競争していた。 「待ってよ―、お兄ちゃん」 「ダメー」 ハハ、と兄である少年は活発な瞳を輝かせて答えた。 上下に青いジャケットズボンを着こなし、黒髪から汗が飛びる。 対して妹の方は眉を八の字にしかめ、息を切らせながら兄を追っている。 桃色のワンピースの裾と茶色の長髪が風でなびいている。どちらも八~十歳といったところか。 「ここに入っちゃ駄目だって、オジちゃんがいっていたじゃない」 「弱虫アロエ―。俺はオジちゃんなんて怖くないもんねー」 舌を突き出し、べぇーとアロエに告げてカルロは走る。 兄妹が訪れた鉱山は『幽霊鉱山』と呼ばれ、イレギュラーが跋扈する山だったのだ。 そう、一年前までは。カルロが首をあげて鉱山を見上げると、足が道を踏み外す。 「うわっ!」 「お兄ちゃん!!」 カルロは両腕をバタバタさせながら身体のバランスを取ろうとするが、無駄だった。 段差の激しい崖下へカルロの小さな身体が乗り出した。アロエが両手で顔を覆う。 落下する感覚にカルロは身を任せ、両目をつぶった瞬間背中に硬い感触が訪れた。 浮遊感とともに目を開くと、カルロを抱えて跳躍するアルマジロ型のレプリロイドがいた。 地面に着地するアルマジロ型のレプリロイドがジロリとカルロを睨む。 ウッ、と言葉を失っているカルロをよそに、アロエが嬉しそうに彼の名を呼んだ。 「スティールオジちゃん!」 「カルロ殿、アロエ殿、ここは危ないから入ってこないように言ったでござろう」 怒ったように告げるスティールエッジに、カルロは気まずそうに笑みを浮かべた。 笑ってごまかそうとしているのだが、目の前の尊敬する男には通じない。 スティールエッジの厳しくありながらも、優しさを秘めた黒眼を動かずに見つめていた。 「まったく、二人ともなんど申したと考えているでござるか?」 カルロたち兄妹に延々と説教をしながらスティールエッジは大通りを進む。 白銀のボディにイエローの線が入っている、非人型のフォルスロイドであるスティールエッジは目立ってしょうがない。 幼い兄弟たちの手をつないで歩く光景は一種異様であるが、騒ぎ立てるものはいない。 それどころか…………。 「よう、スティールエッジ。カルロまた幽霊鉱山にいっていたのか。お前のカアちゃん探していたぜ」 「やあ、スティールさん。今度ご馳走してくれたお茶のお礼をしたいのだが今暇かね? 仕事中? それは残念」 「おう、スティール! 今度の休みに力を貸してくれよ。力が強いヤツが必要なんだ。前みたいな喧嘩じゃないって」 むしろスティールエッジは慕われていた。思わずため息をつくが、スティールエッジの表情は柔らかい。 一人一人街の住民たちに丁寧に返しながら、兄妹の家へ歩みを再開した。 ここに来て一年。ここまで馴染むことになるとはスティールエッジ自身も思っていなかった。 スティールエッジは一年前の光景を思い出していた。 □ 最初に浮かんだ感想は、なんとも活気のない街だろうというものであった。 表通りにヒトの姿はなく、からっ風が埃を舞い散らしていた。 カラカラ、となる風見鶏がよけい街の侘しさを強調している。 スティールエッジはその原因である鉱山に一度視線を向けて、市長との待ち合わせをした建物へ入っていった。 アポを取っていたスティールエッジは応接間に案内され、十分ほど待たされた。 入ってきたそこそこに恰幅のいい中年が入ってくる。目には疲れが見えていた。 その男性にスティールエッジは直接用件を切り出す。 「この街には危険なものが埋まっている。是非とも、拙者にあの鉱山を任せていただきたい」 ちなみにこの用件、“あの男”の身分の一つを使って話を設けている。 ダブルホーンたちのように、現場近くのヒトビトに黙って作業を続けても文句はいわれはしない。 ただ、スティールエッジというフォルスロイドはどこまでも生真面目であった。 「その件についてはお任せいたします」 「かたじけない」 ゆえにあっさりと話が終わり応接間をでる。すると、ドアを開けた瞬間なにかが飛来してくるのをスティールエッジは目撃した。 手の平で受け止めると、視線の先には敵意を向けている少年がいる。 黒髪の活発そうな少年が空き缶を投げてきたらしい。 「こら、カルロ! お客さんになんてことを……」 「父さん、騙されるな! きっとこいつ、悪いヤツだ!!」 少年が叫ぶのを聞き、スティールエッジはキョトンとする。 “あの男”の目的から考えれば、少年のいっていることはあながち間違いではない。 「カル……」 「いや、構わないでござるよ」 スティールエッジは怒鳴りつけようとする市長を止めて、カルロと呼ばれた少年の前に膝を折る。 敵意に満ちた視線に微笑んだ表情のまま顔を合わせた。 「カルロ殿、この街は好きでござるか?」 「当たり前だろ! 最近イレギュラーが増えてこの街にみんなが寄り付かなくなった、っていっているけど絶対前みたいな街に戻る! お前なんかの好きにはさせないぞ!」 「そうでござるか」 カルロの言葉を受け止め、スティールエッジは頷いて立ち上がった。 少年の視線を背中で受け止めながらも、スティールエッジは止まらない。 道中、市長が声をかけてくる。 「申し訳ありません! カルロにはきつくいっておきますので……」 「それよりも市長、最近イレギュラーが増えたというのは本当でござるか?」 「……はい。ガーディアンやセルパンカンパニーに救援を求めようにも、通路をすべて無差別に襲いかかるイレギュラーにふせがれまして……」 ふむ、とスティールエッジは顎に手をやり、市長の瞳を覗き込む。 市長が不安げな表情をしているよそで、スティールエッジは破顔した。 「ならば、一週間以内に拙者がそのイレギュラーを整理してみせよう」 イレギュラーを一掃する。 スティールエッジがそう申し出たのはその場の思いつき、といってよかった。 スティールエッジはこの時点では生まれて間もなかった。 モデルHたちを積んだハイボルトらとは違い、モデル∨の欠片を動力源にした試作型である。 フォルスロイドは新しい技術であるため、改造されたハイボルトたちとは違い、スティールエッジは一から生まれた存在だ。 ゆえに知識と力はともかく、経験はなかった。スティールエッジは自分の行動が情というものからくるものだと、この時点では知らなかったのである。 「スティールエッジさん、イレギュラーの一掃をありがとうございました!」 「いや、市長。まだイレギュラーが固まる場所があるでござる。それに自分たちの任務を遂行するためでもあるから、お互い様でござる」 スティールエッジは機嫌のいい市長に答えながらも、内心冷ややかであった。 イレギュラーの大量発生は幽霊鉱山と俗称される山に、三つのモデル∨が埋まっているのが原因である。 スティールエッジが“あの男”の技術を使ってモデル∨の稼働を抑え、その間にイレギュラーを一掃しただけだ。 マッチポンプ、ともしも事情を知る者が存在すればそう後ろ指を指されてもしかたない。 ゆえにスティールエッジの心の中が晴れることはなかった。 「カルロ殿は元気でござるか?」 「ええ、あいつも活気が戻ってきた街にたいへん喜んでいます」 「それはよかった」 そう、スティールエッジの心は曇ったままだが、カルロが喜んでいるという言葉に少しだけ救われたような気がした。 そして市長とともに周囲を確かめようとしたとき、入ってきた女性からカルロたちがいなくなったと告げられた。 「絶対突き止めてやる!」 「危ないよ、お兄ちゃん」 小柄な身体を駆使して、誰にも悟られず幽霊鉱山に入ったカルロは指を立てて妹を注意する。 アロエは思わず口つぐんだが、相変わらず兄を咎めるような視線だ。 「アロエもあいつはおかしいと思うだろ。あんな姿をしているうえ、こんなところに用事があるなんて絶対裏がある。兄ちゃんを信じろ!」 一面では真実を捉えている言葉をカルロは告げて岩肌を登っていく。 途中警戒に当たっているメカニロイドをごまかしながら、発達した運動神経を駆使して進んだ。 ふと、カルロが後ろを振り返るとアロエが息を切らせながら追ってくる。 邪魔だからついてくるな、といっても聞きはしない。カルロはため息をついて岩に座り、妹を待つことにした。 すると、パラパラと細かい石がカルロに降りかかってきた。 鬱陶しげに腕で払いながら、妹を見るとカルロの後ろに視線を向けて口をパクパクさせていた。 驚いた表情に、相変わらず怖がりだと感想を抱きながらカルロは後ろを向く。 瞬間、カルロの表情が固まった。 全身が紫色の、体長十数メートルはある巨大なクモ型メカニロイドがカルロの頭上に存在している。 モデル∨の力を取り込んだスパイダリルの進化型のメカニロイドであった。 「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」 カルロがたまらず叫んで目をつぶった。アロエが「お兄ちゃん!」と叫ぶ声が耳に入るが、スパイダリル・ネオは止まらない。 八本あるうちの右前方に存在する脚を動かし、カルロを狙って貫こうとする。 カルロが身体を動かすまもなく、巨大な脚は振り下ろされた。 「お兄ちゃん!!」 アロエの悲痛な叫びが山に響く。スパイダリル・ネオの力によって地面が振動した。 兄は助からないのか。ペタリ、と両足をついた幼い少女は巻き起こる煙を虚しく見つめていた。 そのアロエの予想とは違い、カルロは生きて尻餅をついている。 スパイダリル・ネオの前脚を、刀で受け止める存在がいたのだ。 粉塵の舞い上がるなかで白銀の装甲が映えていた。 背や腕、脚を縁取る黄のラインが太陽光を反射する。 刀を持ってスパイダリル・ネオの脚を受け止めたのは、アルマジロの姿をしたフォルスロイド・スティールエッジであった。 スゥー、と息を大きく吸い込み、目を見開いてスティールエッジの怒声がスパイダリル・ネオを貫く。 「ハァッ!!」 スティールエッジがもつ日本刀が、蜘蛛の足を一本斬り飛ばす。 スパイダリル・ネオがバランスを崩して倒れ、スティールエッジはカルロを抱えてアロエの傍に着地した。 カルロをおろし、アロエを見るスティールエッジの瞳をアロエは覗き込む。 きっと怒っている。アロエはそう思ったが、スティールエッジの瞳は違った。 「無事でよかった……」 心底安堵した声色と、優しい表情をみてアロエは確信する。 このヒトはいいヒトだ。 アロエがそう思っていると知らず、スティールエッジは後ろをみて二人をいきなり抱え込んだ。 数瞬後、スティールエッジの背中の丸い装甲が爆ぜる。 火薬の臭いがアロエの鼻腔に届き、スティールエッジは顔を顰めて痛みに耐えていた。 「なにしてんだよ、あんた!」 カルロが取り乱したように問うが、スティールエッジはより二人を引き寄せるだけ。 さらに数回スティールエッジの背中で爆発音が響くが、彼は一歩も退かない。 「やめろよ、お前が傷つくだけじゃないか!」 「カルロ殿……君の言う通りでござる。あれは拙者の上司の仕業でああなった。 これだけでは償いにもならない……だけど、二人の命だけは守り通す!」 スティールエッジの宣言とともに、彼のもつ刀が電撃を帯びる。 スティールエッジが身体を回し、アロエとカルロに光線が当たらないように胸で受けながら刀を構えた。 全身を撃たれながらもスティールエッジは微動だせず、刀を頭部へと運んだ。 「ハァッ!!」 空気を吐き出すと同時に刀を袈裟斬りに振り下す。 電撃が鋭さを増して斬撃となり、光線ごとスパイダリル・ネオを縦に斬り裂いた。 沈黙したスパイダリル・ネオを前に、爆発が巻き起こる。 その凄さを前にしたアロエは言葉を失っている。カルロも同様だ。 スティールエッジは振り向いて、よく見ると傷だらけの顔のまま尋ねてきた。 「二人とも、怪我はござらんか?」 どこまでも穏やかで優しい言葉。 アロエは溜まらず、安心して泣き出してしまった。 この後、二人を市長夫妻のもとへ送り届けて温かく迎えられる。 言い出しっぺのカルロはもちろん両親に説教されたらしい。 この事件を通して、二人だけでなく街の住民たちと交流をもつようになる。 カルロとアロエの兄妹は特に懐いてくれた。 僅かな罪悪感を持っていたが、スティールエッジにとっては幸せな一年だった。 □ 天道総司は買い物袋をぶら下げながら、待機させていた赤いバイクへと視線を向けた。 人通りの少ない道路で異質な雰囲気を漂わせる自車を見つめ、思わずため息をつく。 買い物袋を後部座席に収めながら、天道は訊ねた。 「なんの用だ? 紅渡」 「今日は個人的に訪ねたいことがあったのできました」 世界とやらに付き合うつもりはない、と天道は思考する。 天道の守るべき世界は普通に暮らして普通に笑うヒトビトがいる日常だ。 ディケイドとやらを始末することで、自己を守ろうとする手前勝手な『世界』とやらではない。 「『世界』とやらの計画を俺に実行させたいというなら無駄だ」 「そうではありません。アナタはこのままでは消えてしまいますよ」 「それがお前に関係あるのか? ディケイドとやら以外に」 「僕にはなくても、アナタのことを大切に想っているヒトたちにはあるに決まっているじゃないですか!」 語気を荒くし、視線に怒りを込めた渡を見つめて天道は少し驚いた。 始めて渡という人間の感情を見た気がする。 もっとも、基本的に天道と接するときの渡は、ボロを出さないように必死なだけだったのだが。 その仮面を脱ぎ捨てて、人間とファンガイアを共存させて兄を守った心優しき青年は心の中を明かす。 「このまま消えてしまっては、アナタのことを慕っているエールさんや、ガーディアンのヒトたちがかわいそうだ。 ディケイドなんて僕もどうだって……よくはないけど。アナタの場合はその前にすべきことがある。それを放り出すのは許せない」 だから決着をつけろ。渡の瞳はそういっていた。 なんのことはない。紅渡という青年はお人好しなのである。 天道はここまで言われて始めて気づいた。加賀美のような馬鹿だ、と天道の表情が力を抜く。 「……大丈夫だ。ちゃんとあいつらとの別れは告げる」 「別れ? ここにいることだって……」 「それは無理だ。俺は世界を破壊した。これを見ろ」 天道がグローブを脱ぐと、粒子が手から昇っていた。 渡が天道の手を見ると悲痛な表情をしている。天道の様子に心を痛めているのだろう。 「気にするな。こうなるのは覚悟の上だ」 「諦めないでください。きっと手が……」 「大丈夫だ。俺は自分の不始末を片付けるまではもつ。それよりも渡、すまない」 天道の謝罪に渡が「え?」と疑問を口にする。この謝罪は渡に対して冷酷な相手だと考えたことによるものだ。 渡が心配しているのは世界よりも、天道がここで作った仲間のこと。それがとても嬉しかった。 「それに、頼みがある。いいか?」 「僕に出来ることでしたら」 そう言われ、思わず天道は「お人好しめ」とつぶやく。 渡が鼻白んでいたが、天道の言葉に嫌な響きはなかった。 天道が渡へと向き、自分の望みを告げ始めた。 ドクターCLとの出会いから一週間は経っていた。 あれからプレリーに変化があったかと問われれば、より精力的に仕事に取り組むようになった、と周囲は口を揃えるだろう。 周りはいつものプレリーよりも気合が入っていると考えているが、事情を知るものはそうはいかない。 ガーディアンベースの廊下にて、ストローから飲み物を飲んでいるエールも事情を知る者の一人だった。 「プレリー、身体を壊さないといいんだけどな……」 「プレリー様がどうしたって?」 エールは横から声をかけられ、ギョッとして振り向いた。 そこには金髪のクールな青年、アランが立っている。彼はエールと同じく、訓練を終えたばかりのようだ。 「また厄介ごとか?」 「えーと……そのー……」 エールらしくない不明瞭な態度に、アランは納得がいったように数度頷いた。 エールの傍を離れながら会話を続ける。 「また話せないような事情があるのか。いいぜ、話せるようになってからで」 「うん、ありがとう。アラン」 「いいっこなしだ」 そういって出て行くアランの背中に拝み倒し、感謝を示す。 初代司令官が擬態されただけならともかく、精神もそのままに敵として存在する。 それはガーディアンのメンバーたちにとって衝撃的な真実にほかならない。 そう判断したプレリーとフルーブによって、ドクターCLの存在は伏せられることになった。 「なんだかなー」 納得いかないのはエールである。理屈ではわかるのだが、どこか引っかかりがあったのだ。 自分が入院した理由を伏せられたときも、周りは同じことを思っていたのだろうか。 『まあまあ。こればかりはみんなを混乱させるだけだからね』 「それはわかっているけどさ。ところで、モデルZは」 『しばらくの間そっとしておこう。彼は特に彼女へ思い入れが大きかったから』 そうか、とエールは沈黙している赤いライブメタルへ想いを馳せる。 彼には彼の事情もある。エールは天井をみて、もやもやした気持ちを抱えていた。 プレリーはモニターを見つめて眉をしかめていた。 金色の髪が後ろに流れる赤い船長服のガーディアンの二代目司令官は、自身の姉を擬態したワームとの出来事を胸の底に押し込んで、仕事に没頭していた。 少なくとも忙しい間は嫌なことは忘れられる。プレリーは新しいモデル∨の反応のグラフとイレギュラーの事件がまとめられたファイルを開く。 めぼしいところは今まで探索してきた。天道とエールの活躍もあり、候補地も減っている。 「後はここよね……」 プレリーはある一エリアへ視線を向けて嘆息した。グラフが示すモデル∨の反応は異常なのだ。 複数機のモデル∨が埋まっている可能性が高い。なのに今まで放置していたのは、イレギュラーの発生報告が一度もなかったからだ。 モデル∨の反応を見つけたときは驚いたのだが、街へ調査員を向かわせるとなにもつかめず帰ってくる。 (これ以上は実際向かってみるしかないか……) プレリーはそう考えて現場に赴くことを決めた。 オペレーターに天道とエールを呼んでくれるよう頼み、プレリーは頭に勝手にわいてくるドクターCLの姿と言葉を頭を振って追い払った。 □ 「それで、本当にここにモデル∨の反応があったのか?」 「ええ、間違いはない……はずです」 天道が周囲の穏やかな光景に尋ねると、プレリーが自信なさそうに頷いた。 今までは市長に調査の申し入れを提案してきたのだが、平和な街だといわれやんわりと断られていた。 ならば、あまり正体の知られていないガーディアンの司令官であるプレリーと天道、そしてエールが調査も兼ねてやってきたのだ。 服装もガーディアンの証であるものはすべて外しているため、観光客にしか見えない。 もっとも、プレリーの同行は半ば彼女のわがままでもあったのだが。 「天道、プレリー。ジュース買ってきたよ」 「ありがとう、エール」 頼んではいないのだが、こういう気遣いができるのはエールのいいところだ。 天道はそう思い、ジュースを受け取りながらプレリーを横目で見た。 食生活は天道のおかげでよくなっているのだが、明らかに寝不足とわかるほど自分を追い詰めている。 ちなみに食生活に天道が口酸っぱく干渉してきたため、若いメンバーには煙たがれているが、フルーブなどは感謝をしてくれていた。 まあ、それはさておき。天道は確かに妙だと思う。 この街の中央に存在する鉱山はただならぬ雰囲気をまとっている。 なのにここに居るヒトたちはとても平和に過ごしていた。 それはいいことなのだ。特に天道が口を出す必要もないだろう。 「ここは外れではないのか?」 「……まだわかりません。もう少し調べてみましょう」 プレリーの表情が曇る。彼女がドクターCLのことを考えているのは一目同然。 もともとオーバーワーク気味だったのだが、彼女の姉に擬態したワームと出会ってからは特に酷い。 睡眠時間を削っているようだが、他人がいっても聞かないだろう。どこかで緊張の糸が切れて痛い目をみなければいいのだが。 「そっか、じゃあプレリー、アタシと一緒に行こう」 「エール、これは……」 「わかっているって、調査でしょ? 天道、そっちは任せていいかな?」 エールが尋ねてくるが、天道の答えは決まっている。プレリーを気遣っての行動だ。 天道は「任せろ」と告げて、エールがプレリーを引っ張っていく。 天道は一人静かに踵を返した。 う~ん、と声が漏れながらエールは背を伸ばす。 日差しが温かく、活気が溢れる街のヒトビトの声が聞こえてくる。 平和で穏やかな街だ。エールはプレリーには悪いが、ここで見つかったモデル∨の反応が外れであって欲しいと願っていた。 戦闘になれば巻き込まれるのは力のない彼らだ。 十一年前のイレギュラーの起こした災害に巻き込まれた過去を持つエールとしては、それだけは避けたい。 守るための力を求めたといっても、エールはもともと平和を愛する少女だ。 争わないですむならその方がいい、とつねづね考えていた。 ベンチに座るプレリーに近づき、なにもないね、と話しかける。 「そうね……本当に平和で……。街の調査は今日で切り上げて、明日は鉱山に向かってみましょう」 「うん。けどまあ、こっそりいかないとね。ついてこれる?」 「エール。私はこう見えても、ガーディアンの司令官ですからね」 プレリーがクスリ、と笑ってエールに返事する。ようやくプレリーが笑った、とエールは喜んだ。 プレリーは可愛いのだから、もっと笑えばいいのにとエールはつねづね考えている。 とはいえ、姉に擬態したワームと出会えばそんな余裕もなくなるのが普通だとは思うのだが。 二人が和んでいると、道路の一角が騒がしくなる。なんだろうか、とエールたちが視線を向けた。 エールは映った光景に唖然として、ライブメタルを掴んで地面を蹴った。 「みんな、そこをどいて! ダブルロックオン!」 エールが叫び、赤い装甲をまとうロックマンゼクスへと変身を終えて跳躍する。 人だかりの中央、白い装甲のアルマジロ姿のフォルスロイドへと剣先を向けた。 「アナタ……プロメテたちの仲間のフォルスロイドね!」 「いかにも。そなたは……」 フォルスロイドが口を開く前に、エールに対してブーイングが発せられる。 唖然としているエールへと、次々ヒトビトが文句をいってきた。 「アンタ、いきなり現れてなんだ! 危ないじゃないか!」 「スティールさんにそんなものを向けて、何様のつもりだい!」 などと非難がエールへ向けられる。始ての出来事にエールが戸惑っていると、スゥーッとフォルスロイドが息を吸った。 「喝(カッ)!!」 極大なフォルスロイドの声量にエールだけではなく、周囲のヒトビトも耳の機能が麻痺をする。 コホン、とフォルスロイドが咳払いを一つして、周囲を見渡した。 キーンと鳴る耳を抑えながら、エールはフォルスロイドを睨みつける。 対して、フォルスロイドの方は平然としていた。 「皆さん、彼女は拙者の客でござる。暴言は謹んでいただけぬか?」 そうフォルスロイドが宣言すると、周囲のヒトビトは戸惑いながらフォルスロイドとエールを交互に見ている。 なにがなんだかわからないエールに、聞き覚えのある声が届いた。 「エール、変身を解け。そいつはここのヒトたちを巻き込むような真似はしない」 「天道……?」 エールが疑問符を浮かべながら振り向くと、堂々と近寄ってくる天道総司がいた。 彼がエールの傍に立ったとき、エールは忠告に従って変身を解除する。 「わざわざ足を運んでいただき感謝いたす。拙者はモデル∨搭載型試作フォルスロイドが一体、スティールエッジ・ザ・アルマジロイド。 エール殿、天道殿、そなたらの武勇伝は聞き及んでいる。ひとまず、拙者の基地へきていただけないでござるか?」 スティールエッジの提案に天道が迷わず同意している。 相変わらず罠に飛び込むのを迷わない性格だ。呆れつつも、エールは後をついていく決意をする。 エールはこのとき避難してもらおうと思っていたプレリーが、ついてくる気であったことに気づいていなかった。 フォルスロイドの部屋と聞かされていたゆえ、どこか偏った部屋なのかと思っていたがそうでもなかった。 エールたちが通された部屋は畳が敷かれ木板でできた壁の、飾り気のない質素な和室であった。 通された部屋にて三つの座布団が敷かれ、その上にエールたちは座っていた。 エールとプレリーは始めての和室で足を崩していたが、天道は慣れているのかピシッ、と背を伸ばして正座していた。 そのエールらに、お茶を配ってスティールエッジが対峙する。 なにを企んでいるのだろうかとエールは警戒していると、天道とプレリーがお茶に口を出した。 「って、あんたらはもうちょっと警戒しなさいよ! 毒が入っていたらどうするの!!」 「ご、ごめんなさい、エール。つい、喉がかわいちゃって……」 「落ち着け、エール。なにか仕掛けるつもりならとっくにやっている。ふむ、いい茶葉を使っているな」 「拙者の趣味で取り寄せてもらっているのでござる」 「茶の温度も高すぎず低すぎず。茶葉のうま味を引き出している。けっこうなお点前だ」 「褒めていただけるとは……感謝いたす」 スティールエッジが礼を告げるのを横目に、エールは変な雰囲気に置いてきぼりを食らわされた。 たまらず、エールは核心に迫った。もともと細かいことは苦手であったのもあるが、現状はとても不可解なのだ。 「それで、アタシたちをここに呼んでいったいなんの用?」 「……それは私も聞きたい……」 突如聞こえた、知っている声にエールが思わず立ち上がって振り向いた。 そこには白いアーマーに横に広いヘルメットを装着した、砂時計型の女性らしいラインを持つ敵がそこにいた。 エールは思わずその名を呼ぶ。 「パンドラ!? アナタ……どうしてここに? ううん、それはどうでもいい。モデルHたちの居場所を吐いてもらう!」 「そういわれても……もう私たちの手元にはない……。彼らは新しい適格者の……もと……」 エールが思わずライブメタルを掴んで構えようとするが、天道が手を掴んで制止する。 スティールエッジもパンドラ相手に首を振り、パンドラはそれに従って杖を収めた。 「スティールエッジにここで戦うつもりはない。その意志に従ってやるべきだ」 「つくづくかたじけない。それで天道殿。お主に申し出たいことがある」 スッとスティールエッジが紙を取り出してきた。紙に注目すると、手紙であるらしいことに気づく。 いまどき紙の手紙も珍しいが、直接相手に渡すことにもエールには不可解である。 しかし、天道には意味は通じているようで、その手紙の意をつぶやいていた。 「果し状か」 「さよう。時間、場所の転送座標は手紙に記入しておいた。拙者と一対一、正々堂々と勝負していただきたい。 お主が勝てば我らの本拠地を明かし、モデル∨を引き渡そう。拙者が勝ったのなら、この地には手を出さないで欲しい。返答はいかに?」 「俺は逃げはしない。丁重に承ろう」 「かたじけない」 天道があっさりと引き受け、エールが目を見開いて視線を向ける。 プレリーもお茶を抱えたまま、ポカンとしていた。 「……勝手に決めたら……駄目……」 「このときのためにあらかじめ拙者のやり方はプロメテ殿と乃木殿の同意を得ている。 もとより拙者はなにか仕掛けを持ってはめるのは向いていないゆえ。理解して欲しい、パンドラ殿」 「確かに……プロメテは好きそう……」 パンドラの無表情な顔に、呆れが含まれたのはエールの気のせいだろうか。 エールも天道を咎めるように視線を向ける。もっとも、天道は相変わらず平然としているが。 「エール、プレリー。おばあちゃんがいっていた。たとえ敵でも礼を尽くしている相手は無下にしてはならない、とな。 特に相手が戦いを挑むというのなら、迎え討つのが男というものだ」 「聡明な祖母であったようだ。アナタのような方を育てたことを尊敬いたす」 「気にするな」 もはやエールに言葉はない。二人で話を進め、決闘は決定事項となったようだ。 「立会人にこちらは我が友、黒崎殿を指定したい」 「そうか、ならばこちらはエール。頼む」 「立会人ってなに?」 「居合わせてそれぞれ不正がないように見張るだけだ。今回は見物だけでよさそうだがな」 「買いかぶりでござる。……どうした? パンドラ殿」 くい、とスティールエッジの腕を引っ張っていたパンドラが、周囲の視線が集まるのを待っていた。 パンドラは無表情にルビーのような赤い瞳を周囲へ向けながらボソボソと提案を始める。 「その立会人……複数いてもいいなら……私もやる……」 「構わない」 スティールエッジが返事を戸惑っている間に、天道が了承をする。 エールはどうにもややこしくなってきた、と思い始めていた。 パンドラを相手にさらわれたモデルHたちの居場所を聞き出したいが、どうにも手出し無用の雰囲気だ。 エールはしかたなく、天道に任せることにした。 「この街はスティールエッジに守られている?」 「ああ、俺がお前たちと離れて調査をしたところ、あの街は一年前まではイレギュラーが発生していたらしい。 ガーディアンやセルパンカンパニーに助けを求めれないとき、街を救ったのはあのフォルスロイド、スティールエッジということだ」 「通りでモデル∨の反応はあったのに、事件は起きていなかったということですね。なるほど……」 ガーディアンベースへと戻る道筋ながら、天道はエールとプレリーにこの行動の意味を説いていた。 エールはフォルスロイドであるスティールエッジを信用しきれていないが当然だ。 たいがいが人格破綻者であるフォルスロイドを相手にした彼女が、スティールエッジを警戒するのも無理からぬこと。 天道も実際に顔をあわせるまでは街を守る“ふり”ではないかと疑っていた。 それは実際会って話をした今では杞憂だとわかったが。 「エール、あいつは信用できる。心から街を守る気でないと……今から俺を襲う子供のように住民に慕われない」 「食らえ! スティールオジさんに手を出させ……うわうわっ!」 「こういうふうにな。坊主、怪我はないか?」 天道を襲おうとして、つまずいて転んだカルロを丁寧に助けて天道が声をかけた。 後ろからは申し訳なさそうに妹が謝ってくる。 天道が様子を見ると、エールは疑うのが馬鹿らしくなっている顔になっていた。 スティールエッジは去っていった天道たちを見送った後、パンドラにお茶を出して一息つく。 パンドラはそういった仕草もスティールエッジは様になるものだ、とある種感心していた。 「……本当に真正面から……戦うの?」 「拙者はそれしかできぬ」 「“あの男”が作ったのに……アナタは本当、まっすぐ……」 「生まれはさほど重要ではござらん。大切なのは生きざま、と拙者は思う」 そういうところがフォルスロイドらしくない、とパンドラは感想を持った。 フォルスロイドはライブメタルを動力源とするため、性格が尖っていることが多い。 その中でこの穏やかで心優しいフォルスロイドは例外といってもいいものだろう。 「褒められるものでもござらん。結局のところ、拙者は不器用なのをごまかしているだけだ」 「あの子たちは……そう思っていない……」 パンドラはここにくる際、交流があった兄妹のことをツッコンだ。 魔女のお姉ちゃん、と呼び慕うカルロとアロエの兄妹は嫌いではない。 だからこそスティールエッジに問うべきことがある。 「でも……“あの男”の目的を知っている……?」 スティールエッジは「無論」と返答してさらに続ける。 その顔にはなにかを決意している様子が浮かんでいた。 「世界を破壊するのが“あの方”の目的なのは充分知っている。されど、パンドラ殿。拙者はこの世界が好きだ」 「……今やっていることは……アナタが後悔すること……」 「うむ、だからこそ拙者はこの身を懸けてやることがある。そのためには、天道殿という大きな壁を乗り越えるくらいでないと、拙者にやる資格はない」 それは反逆宣言に近い。でもパンドラはなにも言わない。 彼は世界を愛しているがゆえに、たとえ生みの親でも“あの男”を否定するだろう。 パンドラは違う。彼女は憎しみを持って、“あの男”を認めていなかった。 だからだろうか。目の前のフォルスロイドが少しだけ羨ましかった。 しばらくして天道がカルロ兄妹を連れて来た。 決闘の話を聞いて天道を不意討ちしたということだ。 笑い話。スティールエッジは天道に礼をいって、兄妹を家に送った。 パンドラが少しだけ兄妹の相手をしたが、スティールエッジはそのときの穏やかなパンドラの顔を知っていた。 □ 夜も深まり人気のない鉱山にて、足を踏み入れる影が一つあった。 雲が切れて月光が姿を照らすと、淡い光の中紫の装甲をまとったロックマンVAが街を見下ろしている。 幽霊鉱山、という俗称に相応しい不気味さを漂わせる場所で、黙したままロックマンVAは崖を降りていった。 「チッ、静かだな」 『俺がそうした。今見つかっては面倒だ』 ロックマンVAことペンテの不機嫌そうな声を受けながらも、モデルVAは相変わらず。 モデルVAによって監視機械の死角をついて潜入に成功したのだ。 戦いを避けるモデルVAにペンテは多少の不満を持っていたが、近いうちに天道たちと戦える機会があるのを知っている。 ここで騒ぎを起こせば天道たちと戦う機会を逃す可能性があるため、ペンテはモデルVAに従っていた。 「なんでこんな面倒な真似をしているんだ?」 『なに。最近俺を呼んでうるさい奴を黙らせに向かっているだけだ』 フン、とペンテは鼻を鳴らして曲がりくねった通路を歩く。 ロックマンの驚異的な身体能力がなければ、バランスを崩して転がり落ちていっただろう。 もっとも、ペンテの場合は素の場合も運動能力は高いため、あっさりと通り抜けそうだが。 通路の先を金網が塞いでいるが、ペンテは蹴って跳ね飛ばした。 「あれか、目的の奴は?」 『フン、始めてか? あれがモデル∨……すべてのライブメタルの元祖だ』 「図体がでかすぎる。生意気だ」 円環状の通路に、中央に三機の勾玉型の形の巨大な機械、ライブメタルモデル∨がそこに存在していた。 モデルVAは始めて目にしたモデル∨の感想が「生意気」のペンテに思わず吹く。 「それで、あれになんの用だ? モデルVA」 『なに……少しうるさくてな。黙らせる』 そういってモデルVAが宙に浮く。モデルVAの額が輝いて、光がモデル∨に吸い込まれていった。 モデルVAが細かく震える。同時にモデル∨から触手がペンテに巻き付いてきた。 ペンテは払おうと腕を上げるが、モデルVAが静止する。 『身を任せろ。直接乗り込む』 面倒な奴だ、とペンテがつぶやくのが耳に入るが、モデルVAは構わない。 一週間前から脳裏にうるさい声が響いてしょうがなかった。だから話をつけにいく。 強制的に付き合わされることになったペンテは呆れているが、モデルVAは見ていない。 割れたモデル∨の中央部に、ペンテはモデルVAとともに無音で入り込んだ。 モデル∨がしばらく瞬き、やがて収まる。いつもと変わらない静寂が訪れた。 □ 決闘の日は訪れた。 エールは指定の場所に天道と向かうと、すでに立会人として登場していたパンドラと黒崎を背後に、スティールエッジが佇んでいた。 天道が「ここでいい」とエールに告げて先に進む。エールは天道の背を見届けながら、ため息をついた。 相手であるスティールエッジは優しい性格だ。その相手に向かって天道がどこまで本気なのか、エールはつかみそこねている。 どうも今回は緊張感に欠ける。プレリーも来たがっていたのだが、天道が止めていた。 そんな必要もない、とエールは思ったのだが。 「わざわざ足を運んでもらって申し訳ない」 「気にするな。黒崎、俺たちの決着は……」 「わかっています。今は我が友、スティールエッジの番です」 そういって黒崎があっさりと引き、スティールエッジが立ち上がって前にでた。 スティールエッジは砂時計を取り出し、中央に置く。 数メートルほど後退したスティールエッジが、黒塗りの鞘に収まった日本刀を腰だめに構えた。 天道も両足を開き、ベルトへとカブトゼクターをセットする。 「さて、準備はいいな?」 「応」 カブトの問い掛けにスティールエッジが応え、カブトも鎧を脱いでライダーフォームへと変わる。 キャストオフで飛びかよう装甲は綺麗にスティールエッジやパンドラたちを避けていく。 カブトがクナイガンを頭上に持ち上げ、自然体の構えを保っていた。 同時にエールの肌が粟立った。二人のぶつける剣気が冷たい風となってエールの肌を撫でたのだ。 (さっきまで二人とも……仲がよさそうだったのに?) エールが疑問を抱いていると、砂時計の中の砂がすべて落ちる。 刹那の間、カブトとスティールエッジの地面が爆発しクレーターを作る。 ギィン、と盛大に刃と刃のぶつかり合う音が雷鳴のように轟いた。 殺気が爆発し、嵐となって決闘の場に吹き荒れる。必殺の一撃。互いに急所を狙う容赦無さ。 談笑していた姿を二人は根こそぎ削り取って、殺し合っていた。 エールはごくり、とツバを飲み込む。 (勘違いしていた) 緊張感に欠けることなどない。そして天道の忠告通り、プレリーを連れてこないで正解だ。 あまりにも天道が軽く引き受け、スティールエッジの人柄もあっていつもと違い凄惨な戦いにならないと思い込んでいたのだ。 それは間違いだと、二人が剣気をぶつけた今理解する。 天道もスティールエッジも、自分の命以上のものを懸けて戦っている。その戦いが凄惨にならないはずがない。 鍔迫り合いを繰り広げる二人の背中は、何倍も大きく見えた。 この戦いは今までのフォルスロイドたちとの戦いを上回ることになりかねない。 だから、エールや黒崎のような戦えるものを立会人に選んだのか、と気づく。 巻き込まれても自衛できる者のみ、この戦いを見届ける資格があったのだ。 ごくり、と緊張のままツバをもう一度飲み込む。命以上のやりとりを繰り広げる二人を前に、エールはただ目を逸らせずにいた。 To be continued……
https://w.atwiki.jp/mncorelay/pages/390.html
748、モナニールのMP100消費技。 味方単体の武器属性耐性を上げることができる。 ただしメンバーが限られるため、使うのは自身かゲストになる。 さりげなく勇者の末裔の防御を上げることができる数少ない技、だろう。たぶん。 しかしウィークメイクの倍の消費とは。なんてこった。 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/mncorelay/pages/179.html
プチリレーより登場。 英語で「閲覧するもの」を意味する言葉である。 機械技師が作ろうとしているもので、最終目標。 それを作るために機械技師は様々な分野の技術者をdatの世界中で探し、実際に開発スタッフとして引き抜き活躍させている。 本来、原作においては「空を駆ける機械」だそうだが、datの世界で建造・開発されたものは「空間転移」による移動を実現する乗り物がまず開発された。 モラナー達の尽力により、晴れて試作初号機が実践運用テストを行うまでにこぎつけたのである。 タクシーを改造して作られたそれは、モラナーとフサムレスとサイバーギコを乗せてdatの世界をランダム移動している段階から、地道なマッピングによりある程度狙った場所に空間転移移動を行える目処がついたらしい。 現状、試作初号機に飛行能力はないため機械技師は難色を示したようだが、将来的にはまさに空が飛べるようになる…、かもしれない。 ちなみにベース車両は某都内でおなじみ、グリーン主体の塗装が施された中型クラウンコンフォート。 などと言っていたら、いよいよイイアジャンを開発チーフとして(ほぼ全てハイン博士の手によって)試作弐号機が開発された。 形は緑色の球体であり、力場バリアーを張ることによって完全な球体となることで全ての摩擦を限りなく0にすることができる。 それによりあらゆる攻撃を弾くだけでなく運動エネルギーが減衰することなく加速してどこまでも飛んで行けるという仕組みとなっている。 搭載するメイン動力源は浮遊石?であり、これが大きくなればなるほど、より長い距離を、より高高度まで、より高速で飛行が可能となるらしい。 ちなみに愁が艦長だったがのちに去っていった。 最終的にはこれをベースに空間転移の搭載されたものが「ブラウザ」の完成形になる…、かもしれない。 力場バリアーは初号機にも搭載され、自衛能力強化がはかられたが、球体からかけ離れた車体形状ゆえか燃費面で課題があるらしい。 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/mncorelay/pages/190.html
ギコタクシリーズからNPCとして登場。 原作ではある種最強の孔明。 彼の所業を見返してみると・・・ エー?が保留していたサイバーギコの修理を勝手に一人で完遂。おまけに妙なパーツや波動砲なんていらんオプションまで増やす。 魔力無効化装置なる妖しげな装置で結界を消滅させる。 ドア型空間移動装置で他の次元への扉を作る。 ・・・おい。誰かこいつのチート性能を止めろ といいたいが原作でもこんなんだからどうしたらいいのかよくわからない。 名前 コメント すべてのコメントを見る